2022 Fiscal Year Research-status Report
現代日本における人名使用漢字の字種・字体・読み方に関する実証的研究
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22K00576
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
笹原 宏之 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (80269505)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 人名 / 名前 / 漢字 / 読み方 / 名乗り訓 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の人々の下の名の読み方に関し、歴史的経緯と変遷について解明するための調査研究を実施した。「名乗り訓」に相当しうる漢字の独特な読ませ方は、『古事記』の序に表れるように奈良時代以前から存在していたことが確実であることが明らかとなった。そのような概念と用語も平安時代には萌芽していたことも当時の文献、例えば国語辞典の『色葉字類抄』などにより確認した。当時から「朝(とも)」「和(かず)」のように漢字の字義との関連が不明確な読み方が名付けにおいて広まり始めていた状況も実証できた。 鎌倉時代末頃に兼好法師は随筆『徒然草』において、江戸時代に本居宣長は同じく『玉勝間』において新奇な名に否定的な意見を述べた。一方、公家などはさらに独自の読み方を名付けの場で産出し続けるなど、漢字の用法が持つ自由な側面の利用が命名文化として伝統を成してきたことが明らかとなった。近世には『名乗字引』など名乗り字に関する専門の書籍まで刊行され、また『節用集』の付録などに掲載された。そうしたものが名付けに利用され、庶民も名乗り字による読み方を受容していったことが窺えた。 研究成果の一部は、政策決定のための法制審議会戸籍法部会における委員としての議論(議事録参照)等に反映させた。またマスメディアに向けて、記者レク用の動画の作成とNHK、民放、共同通信、朝日新聞、毎日新聞などの取材への対応と放送内容・記事の確認を通した普及活動を行った。学界と一般に向けては、関連する内容を中国の学会、北京大学との研究交流会で発表し、さらに専門誌『日本語学』(明治書院)で名前の特集を組み、そこに寄稿し、『戸籍』誌にも関連する論考を連載するなどした。これらを通し、広く見受けられる直感に基づく判断に再考を促すための情報を広めた。また名に関する「幽霊情報」、慣用音、外来語、部分音訓、再読、画数占い、地域差の調査にも着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定に即して進捗させていく。
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Research Products
(5 results)