2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K00578
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
辻本 桜介 関西学院大学, 文学部, 准教授 (90780990)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 引用節 / 時制 / 相対テンス / 格助詞「い」 / 複合辞「いは」 / 複合辞「とか」 / 複合辞「とかや」 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は古代日本語の各種の格助詞の働きを記述するものである。本年度は、以下①~③に示す成果をそれぞれ単著論文として報告した。 ①格助詞「い」は実在する事物を表す名詞に接続する。そのため、「い」が付く名詞は実在するかどうか不明であることを表す「む」による連体修飾を承けない。(『国語国文』92-7所収論文) ②古代語の引用節「…と」の時制に関しては主に次のことが言える。(1)時制形式のキが用いられた「…きと」等の形に限って言えば、現代語の場合と同様、基本的に相対テンスと考えて良いが、「見ゆ」を述語とする「…と見ゆ」の引用節は絶対テンスと解せる用例がある。(2)中古語の「…と知る」の引用節は語り手の知識の内容ではなく、あくまで「知る」主体による把握内容が現れるがゆえに、ム・ラムが生起でき、現代語と違って、その時制が絶対テンスとなることは無かったようである。(『日本文芸研究』75-1所収論文) ③中古語の複合辞トカ・トカヤ・トカハに関しては主に次のことが言える。(1)トカ・トカヤは「…トカ/トカヤ+言ふ/聞く」のような形で伝聞情報を提示することに特化している。(2)トカハは「[疑問詞を含む引用語句]+トカハ+知る/見る」という形で知覚による把握の内容を引用する働きに特化している。(3)トカ・トカヤは、後続する名詞句(準体言の場合もある)の表す事物の呼称に付く用法、また、名詞相当の成分を作る用法が派生している。(『日本文芸研究』75-2所収論文) 以上を除く実施状況は次の通り。(1)複合辞「いは」に関してもほぼ分析を終えたので、その成果を英字論文として公刊する目途が立った。(2)複合辞「をもちて」が活用語に接続する用法について分析を終え、論文として公表する目途が立った。(3)移動動詞と共起する「へ」「に」についての用例収集・分析が概ね終わり、成果をまとめる段階に入った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1年度あたり3~4本の論文を書くペースで成果を報告できており、好調である。その理由は、研究代表者が個人的に構築している訓点資料コーパスや、従来の研究で殆んど使用されていなかった古代の私家集・私撰集・歌合類から、想像以上に充実したデータを得ることができていることである。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、「に」「を」「より」「と」などの単一格助詞を個別に分析しつつ、複合格助詞の分析も進める。
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Causes of Carryover |
2023年度分の費用はほぼ使用した。わずかな残額については、そのためだけにあえて特段の使用計画を練る必要は無く、2024年度の経費の執行時に合わせて使用することになる。
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Research Products
(4 results)