2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K00617
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
北田 伸一 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (00613291)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 主要部移動 / 名詞化 / 付加構造 / 併合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、生成文法理論の最新の極小主義プログラムの理論的枠組みの下で、根源的な操作である併合 (Merge) によって付加 (adjunction) 構造を生成することである。 言語一般の普遍性および言語計算の単純性を極限まで追究する極小主義プログラムの枠組みの下では、操作の種類は少ない方が望ましい。しかしながら、近年、付加構造を派生するために、併合とは異なる別の操作が仮定されている。これは理論的に望ましくない。そこで本研究は、主要部移動や同格節等々、従来から付加構造を成すと主張されてきた各現象の実証的研究を通して、併合のみを仮定する簡潔な言語生成システムの構築に寄与することを目的とする。 この目的を達成するために、2022年度は、日本言語学会第164回大会において研究発表を行った。例えば、「太郎があの難しい問題を解いた解き方」のように、「方」によって名詞化される構文においては、「解く」という語根が反復して生起できる。本研究発表では、この反復して生じる「解く」という主要部が、それぞれ独立した語彙として派生に導入されて、その後の解釈の段階で、コピーとして解釈されると提案した。つまり、同一要素として解釈される主要部が、内的併合(移動)ではなく、外的併合によって導入されると主張した。帰結として、「方」名詞化構文に観察される種々の統語特性に原理的な説明が与えられること、および、従来から内的併合(移動)を用いた説明が試みられてきた「主要部移動」という現象を、外的併合を用いて捉える新たな可能性を論じた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進展している理由は、本研究の初年度である2022年度の早い段階で本研究の中心的な仮説を見い出して研究発表を行ったため。また、研究発表においては、機材トラブルによって発表がスムーズにいかなかったにも関わらず、聴衆から多くの貴重なコメントをもらった。これらの多くのコメントを組み込みつつ、先行研究の文献整理ならびに新たな言語データの発掘・収集を行うことによって、着実に本研究を進めていける見通しが立っているため。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の2年目である2023年度には、日本言語学会のワークショップでの研究発表が決まっている。この研究発表の際に得られる聴衆からのコメントを組み込むとともに、先行研究の文献整理ならびに新たな言語データの発掘・収集を行い、論文を執筆する。並行して、関連する現象についての研究も進めていく。
|
Causes of Carryover |
2022年度に開催された各種学会が、今般の新型コロナウイルス感染症の影響でオンライン開催になり旅費がかからなかったため、次年度使用額が生じた。2023年度は新型コロナの状況が徐々に落ち着てきて、学会の現地開催が再開してきているため、その旅費として支出する予定である。もちろん、今後の感染状況は未だ予測が難しいため、旅費がかからない状況になった場合には、文献収集や言語データ収集、あるいは論文執筆に係る論文校正のための費用に組み替えながら、有益に予算の執行を行っていく予定である。
|