2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K00617
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
北田 伸一 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (00613291)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 同族目的語 / 時制節を越えた「A移動」の効果 / フェーズ / 主要部移動 / コピー 対 繰り返し |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、生成文法理論の極小主義プログラムの理論的枠組みの下で、根源的な操作である併合 (Merge) によって付加 (adjunction) 構造を生成することである。 言語一般の普遍性および言語計算の単純性を極限まで追究する極小主義プログラムの枠組みの下では、操作の種類は少ない方が望ましい。しかしながら、近年、付加構造を派生するために併合とは異なる別の操作が仮定されている。これは理論的に望ましくない。そこで本研究は、主要部移動や同格節等、従来から付加構造を成すと主張されてきた各現象の実証的研究を通して、併合のみを仮定する簡潔な言語生成システムの構築に寄与することを目的とする。 この目的を達成するために、2023年度は、日本言語学会第166回大会(1件)、日本言語学会第167回大会(2件)、慶應言語学コロキアム(1件)において研究発表を行った。具体的には3つのトピックを扱った。第一に、英語と日本語の同族目的語の現象を取り上げて、項(argument)として振る舞う同族目的語と付加詞(adjunct)として振る舞う同族目的語の2種類に分類した。その上で、英語と日本語に観察される同族目的語の統語的な類似点と相違点を整理して、分析をした。第二に、時制節を越えて関係づけられる主語の統語派生を検討した。従来から、時制節を越えて主語が移動できない(項は節を越えてA移動できない)と主張されてきたが、移動ではなく、併合によって関連付けられる分析を提示した。第三に、日本語の連結要素の「の」が随意的に用いられる現象を取り上げた。「の」が項や付加詞を接続して生起する環境を、統語・音韻インターフェイスの観点から分析した。 また、佐藤陽介氏(津田塾大学)との共著で論文を1本執筆した。日本語の再帰代名詞の分布を最新のフェーズ理論の観点から説明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の2年目となる2023年度において、4件の研究発表と1本の論文執筆を行うことができたため。 具体的には、本研究の中心的な仮説を支持する実証的な研究内容・言語現象を有機的に関連させることができた。また、研究発表の際に聴衆から多くの貴重なコメントをもらい、本研究の改善点やさらなる研究の経験的・理論的帰結が明確化できた。こうした研究状況であるため、本研究の最終年度となる2024年度には確実な研究成果を残せる見通しが立っている。したがって、おおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度である2024年度には、論文執筆を中心として研究を進めていく。まず、2023年度に研究発表した内容の一つが書籍に掲載されることがすでに決まっている。この論文以外にも、これまでに行ってきた研究内容を論文にまとめて査読付き雑誌に投稿する予定でいる。少なくとも2本は執筆・投稿する計画で進めている。こうした論文執筆を中心とした研究に加えて、先行研究の文献整理と新たな言語データの発掘・収集も引き続き行い、さらなる研究発表および論文執筆も行っていく。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由、および、その使用計画を次に三点記す。第一に、出張を予定していた各種学会・研究会が首都圏近郊での開催が多く、想定よりも旅費が抑えられた。しかし、2024年に予定している学会は地方での開催が多く、多くの旅費が見込まれる。第二に、2023年度に行った研究は日本語を対象として行い、本研究の研究代表者が提供するデータを研究対象としたため、謝金が生じなかった。しかし、2024年度には、英語など他言語の母語話者からデータを収集する予定でいるため、謝金の費用が見込まれる。第三に、2023年度には研究発表を中心に行い、論文執筆の際の英文校正代が掛からなかった。しかし、2024年には、英語での論文を複数執筆する予定でおり、このための英文校正代の費用が見込まれる。
|