2022 Fiscal Year Research-status Report
A study of similarity and/or dissimilarity of brain activation of Japanese learners during written tests and conversation
Project/Area Number |
22K00678
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
平田 裕 立命館大学, 言語教育情報研究科, 教授 (00340753)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 日本語学習者の脳活動 / 筆記テストと会話 / 近似性と相違性 / fNIRS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、前回の科研費の最終年度前年度応募に採択され、それまでの研究を2022年度から2024年度の予定で継続する形のものである。2022年度までの実績としては、① 超級の1名に関して、「呼応関係を持つ穴埋め」と「自由作文」が脳の賦活度が高く、右脳側が大きく反応しているという点で日本語会話タスク時の脳活動との類似性が見られた。②中級後半の2名に関しては、トレンドグラフの分析の結果からも、相関分析の結果からも、実験協力者の間で脳の働きに一貫した傾向は見られず、これまでの研究結果と同様、個人差が大きいことが確認された。③fNIRSの酸素化ヘモグロビンデータと脱酸素化ヘモグロビンデータのどちらを指標にすべきかという点では、引き続き脱酸素化ヘモグロビンデータに注目する意義が確認できた。④弱い左利きと判断される学習者の脳活動を検証した結果、この実験協力者はどのタスクでも左脳・右脳のどちらかが明確に優位ではない。⑤全体的に日本語会話時の方が母語会話時よりも脳の活性化度が低く、左脳・右脳の差も顕著ではない。⑥脳の活性化度だけで判断すると、筆記タスクの中では並べ替えタスクが脳を一番活性化し、会話時の脳の活性化度に近いと考えられる、等の知見が得られた。日本語会話と日本語筆記テストの近似性を追求するには、特定の個人に対しては、四択タスク、または、和文読解タスクが候補となり得るという考察に至った。 本研究は留学生を対象としているため、コロナ禍の影響が大きく、2021年度と2022年度は脳実験を行うことができなかった。2022年度は脳実験によるデータ収集に注力し、初級学習者4名、初中級学習者4名、上級学習者2名を対象とし、合計29回の脳実験を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究全体としては、新型コロナ感染症の影響を2020年度と2021年度に大きく受けた。2020年度と2021年度の2年間は、①海外から渡日する留学生(研究対象とする日本語学習者)が激減し、②安易に脳実験参加の募集をできないという状況であった。2022年度は新型コロナ感染症の状況が改善し、脳実験によるデータ収集の再開ができた。これまでと違い、2022年度の実験では個人内での差に注目し、同一個人に対して2回から4回の脳実験を実施した。全体としても、これまで以上の実験数を消化でき、分析作業を進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
今回のプロジェクトは、被験者の個人差(母語、日本語力など)、筆記テスト形式、テストの内容と難易度、会話のトピック、脳実験の測定部位などの変数の違いによって脳活動の近似性・相違性がどのように違ってくるのかというところまで、より詳細に把握することを目的としている。2022年度は個人内での差に注目し、同一個人に対して複数回の脳実験を実施した。今後、得られたデータの分析を進めるとともに、他の変数を統制した実験を行い、日本語の筆記テストと日本語の会話時の脳活動の近似性と相違性について考察を深める。
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Causes of Carryover |
2022年度は実験協力者個人に対して2~4回というように複数回の実験を行った。また、2020年度2021年度はコロナ禍の影響で脳実験が出来なかったため、その分を取り戻そうと2022年度は実験回数が多くなった。実験コストをカバーするために次年度予算を前倒し申請したが、余裕を見込んだ額を申請したため、100%執行することとはならなかった。前倒しで予算を使ったため、2023年度は繰越し分も含めて限定的な予算となる。実験の人数・回数を絞って、適切に執行する。
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