2023 Fiscal Year Research-status Report
理工系英語プレゼンテーションのためのVR教材開発と教育効果検証
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22K00745
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Research Institution | Digital Hollywood University |
Principal Investigator |
山崎 敦子 (慶祐敦子) デジタルハリウッド大学, その他の研究科, 教授 (10337678)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山中 司 立命館大学, 生命科学部, 教授 (30524467)
長谷川 浩志 芝浦工業大学, システム理工学部, 教授 (40384028)
村上 嘉代子 (平野嘉代子) 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (90424895)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | VR教材 / 英語プレゼンテーション / 学会発表 / 理工学教育 / ESP / コミュニケーション・コンピテンシー / 質疑応答 / 緊張感緩和 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では,2022年度作成のプロト教材1を改善したプロト教材2を作成した.プロト教材2はプロト教材1同様,理工系国際会議発表場面を再現し,VR仮想空間で英語プレゼンの質疑応答訓練を行わせる教材である.発表会場を模したVR空間で発表者の視点を再現し,英語による質疑応答場面で即座に応答をするための学習教材である. プロト教材2では,昨年度のアンケートと緊張感緩和効果検証実験の結果を反映させ,質疑応答で頻度が高い場面を実装した.「聞かれた質問が全くわからない」,「質問のポイントが良く分からない」,「研究の新規性を問われた」,「研究の手法について聞かれた」の4場面である.段階的な学習を意図して,次の4段階レベルの学習モードを4場面全てに設定した:レベル1―質問への模範応答を音声と英文で提示した後に応答させる,レベル2―模範応答の英文のみ表示(音声無し)した後に応答させる,レベル3―模範応答の音声も英文もなく応答させる,レベル4―上記4場面の質問からランダムに質問1つがされた後に模範応答の音声も英文もなく応答させる.SpeechAceによる発音評価機能の表示をより分かりやすくし,本研究成果を公開するWebサイトも改善した. プロト教材2での学習を学生に行わせ,工学系CEFRで教員が英語コミュニケーション力効果評価を行う予定であったが,対象の授業へ導入ができず,この評価は実施できなかった.かわりに,グローバルPBLのプレゼン参加者を対象に,コミュニケーション・コンピテンシーと工学系CEFR評価での効果測定を検証した.学会での研究成果発表での質問などから,実際に教育指導へVR教材を導入するには,教員が感じる問題点を明らかにする必要があることが分かった.そこで2023年度では,本研究で作成したVR教材プロトを活用して教員へのヒアリング調査を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度作成のプロトタイプ教材とそれに対する学習者による評価と緊張感緩和効果実験結果をもとに,2023年度末までに達成を計画した段階までVR教材プロトタイプの作成を進めることができた.2023年度に実装したプロト教材2では,国際会議の発表会場と理工系研究発表での質疑応答の典型的な4場面を,より現実的で没入感のあるVR画面として再現できた.また,段階的に学習できるよう,レベルを4段階に設定することができた.最も難しいレベルでは,質問4つから一つがランダムに質問される設定も実装できた.さらに,学習者の発音を評価する機能もより分かりやすい表示にできた.このように,VR教材の開発自体は順調に進んだと考えている. しかし,2023年度に予定していた工学系CEFRを用いた学習の事前・事後のコミュニケーション力評価を行うことができず,教員による評価結果を得ることができなかった.授業スケジュールの都合から大学院授業の一部としてVR教材を導入することが困難であったため,VR学習への参加学生を十分に得ることができなかったことによる.そのため,2023年度中に予定していたプロト教材2への評価結果に関する研究成果発表は,この年度内では実現できなかった.コミュニケーション力向上効果測定の代替策として,PROGテストによるコミュニケーション・コンピテンシー評価と工学系CEFRによる学習者の自己評価を用いて効果が測れるかについて検証中である. 今後の授業への導入を想定して行った教員への予備的なヒアリングからは,VR教材を実際の授業に導入する際に解決が必要と思われる問題点と今後の研究への知見も得られた.本研究のVR教材が授業へのVR教材導入を現実化させるための研究にも活用できることは,コミュニケーション教育研究に寄与できる成果であると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度では,2023年度に作成したプロトタイプ教材に改良を加え,最終版のVR教材を作成する予定である.この作成プロセスでは,2023年度に作成した教材の4レベルが適切かについても検証する.開発したVR教材のビデオは,既に構築した公開用Webサイトに順次アップロードしてゆく.VR教材の教育的な評価は,前年度同様の評価項目を用いて,教材を使用した学生へのアンケートとヒアリングで行う.さらに,学習者のコミュニケーション・コンピテンシーと工学系CEFRでの評価による検証も行う.また,教材を大学院授業に導入することで,理工系の英語プレゼンを指導する教員によるVR教材学習の事前・事後評価が行えるよう準備する. 2023年度の研究では,VR教材が実際の教育指導で十分に用いられるためには,教員の意識や導入に対する問題点を考慮した教材開発が必要であることが分かった.そこで,英語アカデミック・プレゼンテーション指導をする教員対象に行った2023年度の予備ヒアリング結果をもとに,教員に対するアンケート調査も行う予定である.この調査では,国際会議でのプレゼンを指導する教員に本研究のVR教材を体験,またはVR教材での学習画面のビデオを視聴してもらい,VR教材の授業導入について回答してもらう予定である.これは,本研究で開発しているVR教材の発展的な活用であると考えている.これらの教材作成プロセスや教材評価については,国内外の学会で口頭発表し,論文として学会誌へ投稿する予定である.
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Causes of Carryover |
授業スケジュールの都合から大学院授業の一部としてVR教材を仮導入することができず,VR学習への参加学生を得ることができなかったため,2023年度に予定していた工学系CEFRを用いた教員によるコミュニケーション力向上効果の評価を行うことができなかった.そのため,被験者謝礼および分析に予定していた予算を使うことができなかったが,2024年度では他の指標も含めての分析を予定しており,この予算を使用する予定である. また,プロト教材2のコミュニケーション力効果に関する研究成果発表を国内外の学会で予定していたが,評価結果が十分ではなかったため2023年度では行わなかった.それにより,予定していた国際会議参加費,海外渡航旅費,発表に必要なノートパソコンなどの機材購入への予算が未使用となった. 2024年度では,9月の国内学会および11月と12月の国際会議で発表を予定しており, 2023年度の未使用分をその費用(参加費,旅費,論文校閲費,機材など)に使用する予定である.
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