2022 Fiscal Year Research-status Report
An Empirical Study on the Coordination of Native Language Education and English Language Education Based on the Development of Metalinguistic Abilities
Project/Area Number |
22K00776
|
Research Institution | Hosen College of Childhood Education |
Principal Investigator |
五十嵐 美加 こども教育宝仙大学, こども教育学部, 講師(任期付) (80880814)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | メタ言語能力 / ことばへの気づき / 自己効力感 / 実践研究 / 教科等横断的指導 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は小学校6年生を対象に、メタ言語能力育成を目的とした授業の効果を検証した。メタ言語能力とは、言語そのものの構造や機能について意識をめぐらせることができる能力のことである。本研究では、メタ言語能力が外国語習熟度に正の影響を与えるということが先行研究で明らかになっていることから、学校現場におけるメタ言語能力育成の具体的な方法やその効果に関する知見を得ることを目的とした。 実施方法は、調査協力校の英語・国語担当の教員によって、語順・文の構造・あいまい性を扱う内容で5回×45分の授業を実施した。授業は、基本的に日本語表現を対象に解説され、必要に応じて英語を含む外国語の表現を取り上げる形で進められた。対象となった66名の児童は、事前・事後にメタ言語能力テスト、および、言語学習に関する質問紙(動機づけ・信念)に回答した。ただし、事前の質問紙調査については全調査協力児の約半数の回答しか得られなかった。 結果として、メタ言語能力テストのスコアに有意な上昇が見られた(文分節課題: (t (59) = -5.827 , p = .000, d = .67), あいまい性判断課題: (t (59) = -7.436 , p = .000, d = .98))。一方、動機づけ関連変数のうち、言語学習に対する自己効力感については有意なスコアの低下が確認された(国語学習に対する自己効力感: (t (31) = -2.058 , p = .048, d = . 25), 英語学習に対する自己効力感: t (31) = -2.806 , p = .009, d = .28))。 改善点はあるものの、今回の教授法、および教材は児童のメタ言語能力向上に寄与するという示唆が得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は予備的研究として行った教育実践とその効果について、The 8th IAFOR International Conference on Education in Hawaii (IICE2023)で発表した(発表タイトル:English Instruction Practice for Students of an Early Childhood Education Course: Aiming to Develop Students’ Metalinguistic Ability)。また、発表内容を論文化したものがThe IAFOR International Conference on Education in Hawaii 2023 Official Conference Proceedingsに掲載された。 さらに、小学校6年生を対象とした実践研究については、事後アンケート・テストまでのデータをまとめて分析した。その分析結果については関東甲信越英語教育学会第46回栃木研究大会にて研究発表を行った。発表内容の一部は、KATE Newsletter117号にて報告した。 関東甲信越英語教育学会第46回栃木研究大会での発表の際得た、他の参加者からのコメントを踏まえて当該研究データを再分析した。再分析・加筆修正してまとめた成果を国際学会にて発表する予定である(The European Association for Research on Learning and Instruction Conference)。なお、当該の学会では、研究発表の採択基準としてabstractの査読通過が定められているが、本研究は評価者平均約80点(100点満点)を獲得して、採択が決定している。
|
Strategy for Future Research Activity |
すでに実施済みの調査でメタ言語能力テストスコアの上昇がみられたことから、本研究の授業実践は児童のメタ言語能力向上に寄与するという示唆が得られた一方、自己効力感には負の影響を与えるということが示唆された。今回の介入授業では「ことばの奥深さ」を知るという狙いもあったため、それまでの授業内容よりも難易度が高い課題に取り組むことになり、結果的に児童たちが国語や英語に対して「難しい」という印象を抱いてしまった可能性がある。今後は、難易度を調整することにより、動機づけや信念に対しても正の影響を期待できる授業内容を検討していく予定である。児童たちが無理なく、直感が利く母語でその仕組みや働きについて理解を深め、ことばの豊かさ・面白さを実感できる内容になるように作成する。統語的側面については、「語順・句」、「語・文の接続」、「あいまい性」を、形態的側面については、「接辞(接頭語・接尾語)」、「複合語」、「動詞の分類(自動詞・他動詞など)」扱う予定である。いずれも、日本語の特徴と英語の特徴を比較しやすく、両言語における共通の基盤を論じやすいトピック、かつ、児童にとって親しみやすい題材を検討している。 また、すでに実施した小学校6年生を対象とした実践研究の遅延データの分析を進め、本研究の授業実践の効果の持続性について検証する。検証結果については、次年度のThe European Association for Research on Learning and Instruction Conferenceでの発表を目指して論文化を進める。また、予備的データとして取得した小学校3年生を対象とした音韻意識調査データの分析を進め、本研究の参考となるような知見とすることを目指す。
|
Causes of Carryover |
当該助成金が生じた状況としては、参加した学会について、当初Regularの参加費を支払う予定だったが、参加応募時期がEarly Registrationの期間内であったため、Regularの参加費よりも安い金額で参加登録できたということがある。次年度の直接経費の計画としては、今年度に引き続き国際学会への参加が決定しているため、旅費と参加費で約38万円を使用予定である。また、現在使用中のWindowsノートパソコンのファンが動かなくなり、不調であるため、物品費(PCとPC関連用品を予定)として約20万円を使用する必要がある。残りの2万円余は文献調査に必要な図書購入費用に充てる予定である。
|
Research Products
(3 results)