2022 Fiscal Year Research-status Report
東アジア墓葬文化の伝播と展開―金石文資料の形態的分析を中心に―
Project/Area Number |
22K00837
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
稲田 奈津子 東京大学, 史料編纂所, 准教授 (60376639)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 金石文 / 墓葬文化 / 東アジア / 墓誌 / 買地券 / 比較史 / 儀礼 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は墓誌・買地券といった金石文資料を中心に、その形態的特徴に注目しつつ、墓葬文化の東アジア世界への伝播と受容・変容の過程について考察するものである。 本年度は、比較的点数が限られる買地券の検討に注力することとし、各所蔵機関の協力のもと、研究協力者と共同で、5月に九州国立博物館における宮ノ本遺跡出土買地券の調査・撮影と出土地踏査(福岡県太宰府市)、6月に倉敷考古館における矢田部益足買地券の調査・撮影と出土地踏査(岡山県倉敷市)、11月に東谷博物館(韓国全羅南道光州広域市)における兎山郡買地券の調査を実施した。また近郊の所蔵機関における調査も随時実施した。中国の事例については王海燕・榊佳子とともに検討を重ね、関連する科研研究会において稲田「新出高麗買地券の紹介と釈読」・王「浙江・江蘇両省の買地券事例の紹介と釈読」と題した研究報告をおこない、関係諸分野の研究者からの教示を得た。また成果の一部は東京大学ヒューマニティーズセンター第69回オープンセミナー「黄泉の国との契約書―東アジアの買地券―」において、王「中国の買地券―呉越地域の事例を中心に―」・稲田「朝鮮と日本の買地券」と題して報告し、国内外の研究者や学生・一般市民など118名にのぼる参加者を得ることができた。最終的な成果は、稲田・王・榊編著『黄泉の国との契約書―東アジアの買地券』にまとめ、3月に出版した。 そのほか、古代日本における東アジア世界との文物交流をめぐり、「国際都市 平城京」を執筆するとともに、内容を増補して「平城京の国際性」と題する講演をおこなった。また国際学術会議における広開土王碑や韓国木簡をめぐる研究報告に対するコメントもおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID-19の状況が改善したことを受け、研究協力者を中国から5カ月弱招聘して、共同での調査・研究をおこなった。また国内の研究協力者も交え、国内での資料・史跡調査2回、韓国での資料調査1回を実施し、そのほか近郊の資料所蔵機関における調査も随時実施した。調査成果をもとに検討を進め、その成果を研究会やオープンセミナーの場において報告し、そこでの知見もふまえつつ書籍にまとめ、出版することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
書籍の出版を受け、関係諸分野の研究者からの教示が続々と寄せられている状況にあり、まずはそれら指摘をふまえた再検討と追加調査を進める必要がある。中国での調査はCOVID-19のために実現が難しい状況が続いているが、改善次第、実施する予定である。今年度で買地券については一定の成果をあげることができたので、次年度以降はより点数の多い墓誌について調査・検討を進めていく。そのための国内外出張と、情報共有のための研究会開催を予定している。
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Causes of Carryover |
年度末を期限に依頼していた史料翻刻作業について、完成稿の字数が当初予想を下回ったため、確保していた謝金に残額が生じた。次年度繰越分については次年度計画の範囲内で使用できるものと考える。
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Research Products
(8 results)