2022 Fiscal Year Research-status Report
A study of the development of the US funeral industry and professionalizing the funeral services
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22K00846
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
黒沢 眞里子 専修大学, 文学部, 教授 (40338588)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 黎明期のアメリカ葬儀業界 / ポジティブな死生観 / 計量テキスト分析 / フューネラルディレクター / エンバーミング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、葬儀「先進国」アメリカの近代的葬儀の成り立ちの研究である。今日のアメリカ葬儀産業が巨大ビジネスに発展した背景には、アメリカ人の死に対するポジティブな意識と、それがアメリカの葬儀に「革新」をもたらしたことがあると考えた。この仮説を検証するために、アメリカの葬儀業界紙(誌)の創刊当初から現代に至る約110年の歴史的展開を計量テキスト分析の手法によって明らかにすることが本研究の目的である。 初年度にあたる2022年度は、19世紀後半に発刊された葬儀雑誌、The Casket、に掲載された1,551件の広告を対象に、ポジティブな傾向が広告ではどのように現れているか、発行日、広告主名、住所、市、州、商品説明画像の有無、を変数とし、計量テキスト分析を用い検証した。結果、葬儀者を意味する「undertaker」が徐々に割合を下げ、ポジティブな態度形成の鍵となる「funeral director」が出現し始めたこと、棺を意味する古い用語「coffin」の出現が激減し、葬儀のプロフェッショナル化の鍵である「embalming」が年を追うごとに増加したことが明らかになった。19世紀後半の葬儀広告分析では、「casket」(棺を意味する新たなアメリカ語)を中心とする商品の販売がどのような製品と結びついてビジネスを拡大していったか明らかにできた。時代が進むと「hearse」、「embalming」の存在が増し、「funeral director」の業務が商品販売からサービス業へと変化する兆候も確認できた。それが20世紀へとどのようにつながっていくのか、その道筋を辿る次の段階に進む上での出発点となる有意義な結果を得られた。 この結果は2022年度のアメリカ学会第56回年次大会にて口頭発表を行った。さらに、ホームページ上での研究テーマと内容の広報、および希望する研究者へのデータ提供を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初はコロナの影響を考慮して計画に余裕をもたせたが、予想したほどコロナの影響を受けずに、学生アルバイトを雇用した雑誌のデジタル化作業が順調に進んだことと、計量分析を委託した分析支援者が内容をよく理解し、分析の助言も適切で、分析自体も効率的に作業を進めてもらうことができたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに葬儀雑誌の目次分析、エディトリアル分析が終了し、現在は20世紀の広告分析が進行中である。すでに終了した19世紀の広告分析に加え、20世紀の広告分析が明らかになることによって、アメリカの葬儀業界の組織化・プロフェッショナル化の軌跡を浮彫すること、そのプロセスでアメリカのポジティブな死生観が具体的にどのような形をとって具現化されたのか明らかにすることを目指している。 2年目の2023年度は、計量テキスト分析の考察部分の検証を行うために、研究対象の葬儀雑誌、The Casketの創刊地であるニューヨーク州ロチェスターとニューヨーク市の現地調査を行う予定である。さらに、アメリカの葬儀・死生観の専門家を訪ねて助言を得ることも計画し、すでにその約束を取り付けている。
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Causes of Carryover |
19世紀の葬儀広告分析に続いて、20世紀の葬儀雑誌分析を2023年2月より開始した。大学の春季休暇中の2月3月に集中してテキスト分析を進めるべく予算の前倒しをして準備を行った。20世紀の傾向を見るために葬儀雑誌のどの部分のテキスト分析がもっとも有効か判断するために、まず「目次」分析を行い、次に雑誌に共通して掲載されていた「editorial」の記事分析を行った。これらの分析では、経時的変化を読み取るという点では明確な結果を得られなかったために、最終的に、19世紀の広告分析と同様に、広告に焦点をあてて分析することが有効であろうと判断した。20世紀をカバーする広告が膨大な数で、作業が3月末に終了せず、現在も進行中である。以上が、次年度使用額が生じた理由である。
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Research Products
(3 results)