2022 Fiscal Year Research-status Report
第二次世界大戦期日本の「大東亜共栄圏」政策の国際比較に関する研究
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22K00852
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
安達 宏昭 東北大学, 文学研究科, 教授 (40361050)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 日本史 / 近現代史 / アジア太平洋戦争 / 地域統合 / アジア / 東南アジア / 国際比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、第二次世界大戦期の「大東亜共栄圏」を「広域圏」として捉え、その態様を世界史上のなかに位置づけて、圏域としての独自性や特徴を把握することを目的としている。本年度の研究業績は、以下の2点である。 第一に、同時期に世界の各地でつくられようとした「広域圏(地域圏)」と比較して、その特徴を把握するために、他の地域の「広域圏」に関する研究を収集したということである。まだ、その数は多くないが、ドイツの「生存圏」との違いについて理解が深まった。また、この「広域圏」形成の動きが帝国間の同盟・戦争と連動したことがら、帝国間の協力・連携・競合・比較などを包括的に捉える理論の研究も学んだ。代表的なものとしてTrans-Imperial Studyという理論とその事例研究について研究書・論文を収集した。 第二に、イギリスが支配していたマレーシア・シンガポールを占領した日本の統治構想、とりわけ民族政策について分析を行った。軍政の中心人物であった渡邊渡少将の所持していた史料を復刻した『渡邊渡少将軍政関係史・史料』 全5巻(龍渓書舎、1998年)や、外務省が開戦前から調査していた報告書、満鉄東亜経済調査局編の『南洋叢書』を対象として、日本政府・軍が開戦前のイギリス統治の経験をどのように認識していたのか、さらにそれに基づいてどのような施策を考えていたのか、という点について分析を行った。現地の慣行を重視するといいながらも、これらの地が日本の領土になることを想定して、日本化のための準備的な施策が採られたことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナウィルス感染症のパンデミックや原油高騰・円安などから航空機運賃を始めとする旅費が高騰し、予定していたヨーロッパでの史料調査ができず、調査研究は遅れた。 イギリスの植民地であった「英領マラヤ」(現在のマレーシア)とシンガポール、オランダの植民地であった「蘭領東インド」(現在のインドネシア)の日本軍政期の史料は、宗主国であったイギリス・オランダの国立公文書館にも保管されている。特にイギリスの支配と日本の支配の比較をするためには、イギリスの国立公文書館が保管する日本語史料や、イギリスの日本支配の認識に関する史料の収集が不可欠であるが、それを調査することができなかった。マレーシアやシンガポールへの調査も予定しているが、現地にある史料は主にオーラルヒストリーの聞き取り資料が多く、まずはイギリスでの文書史料の収集を優先することを考えた。それら文書史料の分析した後に、聞き取り資料の分析をすることがより有効だと考えるためで、調査の順序を変更することが難しかった。 国際比較のための他の帝国に関する研究の情報収集や、日本国内にある史料は分析することができた。それゆえ、研究は一部分では進展したものの、分析の根幹となる主要な史資料の調査・収集を充分に実施できず、当初の計画に対して遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、以下の5点を中心に研究を推進していきたい。第1に、イギリスやオランダの国立公文書館での史料収集を行うことである。まずはイギリスで、イギリスが保管している日本軍政に関連する史料の分析を行いたい。シンガポールで警備司令官を務めた河村参郎中将の日記を中心に、イギリスが戦犯裁判や鹵獲した日本軍の史料の収集を実施する。そのうえで、イギリス外務省や軍などが集めた日本軍政に関する情報を記録した文書を収集する予定である。次いで、オランダの国立公文書館やオランダ王立戦争資料研究所が所蔵する日本側史料の調査・収集を行う。 第2に、今年度も行っていた、日本以外の「経済圏」についての研究を、英語論文を中心に収集を継続して、その特徴を把握したうえで、これまで行ってきた「大東亜共栄圏」政策と比較を実施する。その際には、今年度学んだTrans-Imperial StudyやNew Imperial Studyの理論も活用する。 第3に、日本国内において、日本軍政が進展した占領後期に関する資料を探索・調査・収集して、軍政全体の展開過程を明らかにする。 第4に、シンガポールやマレーシアにある国立図書館・国立公文書館、華社研究センター集賢図書館などを訪問し、日本軍政期の資料や証言を収集し、占領政策の実態を分析する。そして、これらをイギリスで収集した史料や日本側の史料と照合して、マレーシア・シンガポールにおける日本軍政の展開と現地社会・経済に与えた影響を分析する。第5に、上記の研究をふまえて、日本軍政をイギリスの植民地支配と比較し、その統治方法の継承と断絶を分析して、日本による占領支配の特色を明らかにする。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、予定していたヨーロッパでの史料調査・収集が、コロナウィルス感染症のパンデミックや原油高騰・円安などによる航空機運賃・宿泊費の高騰のために、中止せざると得なかったことが大きい。また、実施した分析や研究が、これまで購入していた史料集や図書館に所蔵されていた資料などを使用して効率よく行うことができたため、全体的に経費支出が抑えられたためである。 使用計画としては、第1にイギリス・オランダの国立公文書館等での資料調査に出張する旅費に使用する。この旅費が円安から、かなりの高額になることが予想される。第2に、シンガポール・マレーシアでの資料調査への出張旅費として使用する。これについては、2024年度以降の実施を考えている。第3に、研究代表者が本研究を進めていくうえで必要となる書籍や資料集の購入費、文具費に使用する。
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