2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K00860
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
森下 徹 山口大学, 教育学部, 教授 (90263748)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 城下町 / 近郊農村 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までの活動に引き続いて、岡山城下および近郊農村における史料収集を集中的に行った。これまで岡山市立中央図書館国富文庫、藤原文庫などによって城下町の社会構造と周辺農村との有機的な関係を考察してきたところであるが、その分析をより豊かに発展させうる見通しをもつことができた。 当該年度にあらたに発見できたものに、岡山県立図書館に配蔵されている二日市村、岡村などの願書留がある。城下町の南に隣接するこの地域は奉公稼ぎや婚姻関係を介して、とりわけ城下の諸町と一体化していた様相を具体的に把握できた。また戦災に遭って史料に乏しい岡山城下のなかにあって、同図書館に複数の町の人別帳が伝来していたこともあらたに確認できた。 さらに同図書館には、城下町東方、沖新田の庄屋史料には在方下役人を勤めたことによると思われる帳簿類が豊富に残されており、それらを収集することで、上道郡、津高郡、御野郡といった近郊部在方の社会構造分析が可能になる。その作業にも着手している。この他、岡山シティミュージアムで開催された企画展で岡山藩領域の絵図を概観することができた。あるいは西国の城下町と比較するために、江戸とその近郊農村に関する史料の所在状況などについての情報収集も行ったところである。 こうして史料収集活動に軸足をおいて研究を進めたが、その成果の一部として、身分論の成果のうえに地域社会をとらえる方法について考察した論考を発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
岡山および近郊農村を中心にしながら、史料収集は順調に行えている。並行して分析作業にも着手できている。当初の計画どおり概ね進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
岡山藩領を素材に、城下町と周辺農村との関係にかんする史料収集および分析を引き続きおこなってゆく。対象となるのは、岡山市立中央図書館蔵藤原文庫、国富文庫、岡山県記録資料館小西家文庫、岡山県立図書館郷土資料などである。これらについては、すでに一程度の収集、分析を経ているので、労働力の移動、婚姻関係、土地所有、商業活動などいくつかの切り口に沿って成果をまとめるよう努める。 また比較対象として、山口県下の城下町と周辺農村を考察できる素材の収集・分析にもあらたに着手する。目下想定しているものに、城下町に加えて複数の在町からなっていた周防徳山藩領、および岩国城下と周辺農村がある。それぞれ山口県文書館徳山毛利家文庫、岩国徴古館岩国藩政史料より史料収集にあたる。ともに町方関係史料と在方史料の双方からアプローチすることが可能だと考えている。 さらに江戸や大坂という巨大都市と周辺農村との関係についても、主に先行研究によって学び、西国城下町の例との比較考察を試みる。 最終年度に向けて、これらを総合的にとりまとめるための準備にも取り掛かることとする。
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Causes of Carryover |
これまで岡山藩領の史料収集を主としておこなってきたが、分析作業が途中なこともあって人件費などでの使用があまりなかった。また岡山藩領以外での史料収集作業が残っているため。 次年度は岡山藩関係の史料分析と筆稿作業を謝金を使っておこなう。また津山藩や大坂についての都市と農村社会に関する史料収集作業にも着手する。
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