2023 Fiscal Year Research-status Report
The establishment of the Tokugawa Shogunate and the construction of castles during that period
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22K00872
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
及川 亘 東京大学, 史料編纂所, 准教授 (70282530)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 公儀普請 / 天下普請 / 無年号文書 / 軍役 / 夫役 / 城郭建設 / 徳川家康 / 江戸幕府 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は本研究に先行して実施した基盤研究(B)「近世統一政権の成立と天下普請の展開―中近世移行期史料の研究資源化を通じて―」(17H02382、研究代表者・及川亘、2017~2021年度)によって『大日本古文書』・『大日本近世史料』等から抽出した公儀普請関係史料リストのうち、「毛利家文書」・「熊谷家・三浦家・平賀家文書」・「山内首藤家文書」・「浅野家文書」・「島津家文書」の分を対象として、研究協力者の協力を得て無年号文書の年次比定等についてリストの点検を行った。 本研究の核心となる課題に関わるものとして、口頭で「公儀普請における軍役と夫役」と題して研究報告を行った(近世史の会、2024年2月、於立教大学)。これは諸大名に軍役として課された公儀普請と夫役として動員された公儀普請について、幕府による両者の使い分けやそれぞれの実態・特質について論じたものである。これまでも公儀普請に両様の方法があったことが指摘されてはいたが、その違いや違いの意味については自覚的に論じられることがなかったものである。 また、本研究による無年号文書の分析の成果の一環として、佐賀県立図書館・東京大学史料編纂所主催シンポジウム「坊所鍋島家文書を読みなおす―成立期の佐賀藩と江戸幕府―」(2023年11月、於ホテルニューオータニ佐賀)に参加し、「鍋島勝茂の佐賀藩継承」の題目で研究発表を行った。慶長12年の鍋島勝茂による佐賀藩継承の経過を無年号文書の年次比定の分析を通じて明らかにした。成立期の佐賀藩に関する最も重要なトピックの一つとされてきた龍造寺家佐賀藩から鍋島家佐賀藩への交替の事情について、従来、近世後期に成立した勝茂の年譜である「勝茂公譜考補」(『佐賀県近世史料』第一編第二巻)の記述によって理解されてきたことを修正するもので、その成果は2023年11月21日「佐賀新聞」朝刊でも紹介された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の公儀普請関係史料リストの点検は、研究実績の概要に記した7つの文書群について実施した。これにより当初予定の6~7割が完了したことになる。 これまでの関係史料リストの点検を通じて行った無年号文書の分析により、本課題の核心をなす関心である、諸大名に軍役として課された公儀普請と夫役として動員された公儀普請の違い・関係や、それぞれの実態・特質について、口頭発表の段階ではあるが一定の見通しを得た。 また、昨年度に行った鍋島直茂・同勝茂の花押の切り出しにより可能となった両者の花押の編年分析を通じて、成立期の佐賀藩の主要課題である龍造寺家から鍋島家への交替、すなわち鍋島勝茂による佐賀藩継承について、新説を提示した。 なお、原本史料調査としては熊本大学附属図書館所蔵「松井家文書」の調査を行い未知の公儀普請関係史料を発見した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は『大日本古文書』・『大日本近世史料』等から抽出した公儀普請関係史料リストのうち、残りの「伊達家文書」・「上杉家文書」・「細川家史料」の点検を継続するとともに、リストの公開方法を検討する。併せて、昨年度に行った鍋島直茂・同勝茂の花押の切り出し画像の成果公開方法についても模索する。 本年度の口頭発表をもとに、諸大名に軍役として課された公儀普請と夫役として動員された公儀普請の違い・関係や、それぞれの実態・特質について、また、夫役として動員された「千石夫」の実態について論文化する。それにより、一次史料(多くは無年号文書)の分析を通じて、幕府の意思決定過程、大名の対応など公儀普請の経過と意義に関する主要な課題について、具体的な政治過程に即して論じることを目指す。 原本史料調査としては、仙台市博物館所蔵「伊達家文書」、高知城歴史博物館所蔵「山内家文書」などの調査を実施可能な順に進める。
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Causes of Carryover |
予算は概ね計画通りに執行したが、数千円の残額が出たので、次年度に使用する。
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Research Products
(5 results)