2022 Fiscal Year Research-status Report
1980年代後半から2000年代における東京を中心とした都市改造の歴史学的研究
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22K00879
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
源川 真希 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (10264574)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 都市再開発 / 東京一極集中 / 規制緩和 / 首都圏基本計画 / 工業等制限法 / 都市再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、これに先行する研究課題である「都市再開発政策の歴史学的基礎研究」とあわせて研究を進めた。1990年代のバブル経済崩壊と東京などの地価下落のなかで、それまでの地価抑制をめざした政策とは逆に地価上昇と、金融機関の不良債権解消をめざす方向性が打ち出された。同時にもともとは対米貿易黒字解消のために行われた規制緩和政策が、それまでの東京一極集中抑制から、再度の集中の容認を強く求め、工業等制限法の緩和・撤廃などを求めていく状況があった。 以上のなかでの都市再開発、首都圏基本計画などの動向について、国土審議会首都圏整備特別委員会計画部会(以下、計画部会とする)、規制緩和委員会・規制改革委員会での審議状況などに焦点をあてて分析した。その結果、計画部会では従来の「国土の均衡ある発展」や東京一極集中の是正という観点から、第5次首都圏基本計画の策定を行うのが基本的な路線であったが、規制改革委員会が東京一極集中を容認する方向での政策立案を求め、計画部会に政治的圧力をかけている様子がわかった。また従来は地方への工業の分散を求めた自民党も、この動きを次第に容認していくことが明らかとなった。こうして1999年の第5次首都圏基本計画は、東京への集中を一部是認するものとなり、また工業等制限法の緩和のちの廃止が進められる結果をもたらした。 以上の研究成果は、研究論文「第4次~第5次首都圏基本計画と東京一極集中 規制緩和と首都圏の変容」としてまとめられ公表された。 さらに、1999年以降の規制改革委員会での、土地政策や都市再開発に関連する議論を整理している。これは都市再生特別措置法の成立過程にも関連するものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
先の研究課題「都市再開発政策の歴史学的基礎研究」のもとで、著作『首都改造 東京の再開発と都市政策』(吉川弘文館)を刊行し、高度経済成長期から2010年代における都市再開発の過程を明らかにし、その研究課題に取り組みつつ、当該「1980年代後半から2000年代における東京を中心とした都市改造の歴史学的研究」の課題についても作業を進めた。その結果2023年3月には、論文「第4次~第5次首都圏基本計画と東京一極集中 規制緩和と首都圏の変容」をまとめ公表することができた。その意味で当初の計画以上に進展していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで1990年代における規制緩和政策と首都圏基本計画などの策定の政治過程をみてきた。続いてこの過程をさらにミクロな視点で調査していく。つまり国土審議会首都圏整備特別委員会計画部会、規制改革委員会、建設省・国土庁、自民党などの関係を明らかにする。また規制改革委員会で議論されている都市政策関連の項目を洗い出し、都市再生政策につながる政治過程について詳細な調査・分析を行いたい。 他方で国際的視点という点では、コロナ禍において制限されていた海外での調査を再開させ、本課題に基づく諸外国の再開発政策の調査を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
先行する研究課題「都市再開発政策の歴史学的基礎研究」に基づく調査研究も同時に行っており、また2022年度に海外調査を実施できなかったために、次年度使用額が生じる結果となった。次年度使用額が生じたものの、2023年3月には研究書に寄稿することができたため、成果はあがっていると判断している。 2023年度は国内での調査研究を進めると同時に、海外調査を行う予定である。
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Research Products
(1 results)