2023 Fiscal Year Research-status Report
佐渡金銀山技術書群の分析に基づく鉱山資料の集成と鉱山社会史の解明
Project/Area Number |
22K00886
|
Research Institution | The Niigata Prefectural Museum Of History |
Principal Investigator |
渡部 浩二 新潟県立歴史博物館, その他部局等, 研究員 (20373475)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 佐渡金銀山 / 鉱山技術書 / 鉱山用具 / 鉱山用語 / 鉱山技術 / 鉱山社会 / 佐渡金銀山絵巻 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、選鉱に関する鉱山用語・鉱山用具の抽出を行い、昨年度実施した採鉱に関するものについても補足調査した。鉱山用語については、昨年度に引き続き、18世紀中期頃の『佐州金銀山諸道具其外名附留帳』(新潟県立歴史博物館所蔵)、『銀山仕様書』(新潟県立佐渡総合高等学校橘鶴堂文庫所蔵)を基礎史料としながら、選鉱に関するものを中心に約50件を抽出し、翻刻と現代語訳を試みた。そして、これら鉱山用語の有効な解説手法を検討するため、佐渡金銀山を中心とした全国諸鉱山の用語解説に関する先行研究の問題点の整理を継続した。また、抽出した鉱山用語のなかから、選鉱作業を中心とした労働者の組織、編成や賃金に関するデータの整理を試みた。選鉱作業には女性が多く関わり、年少の男性労働者もみられる。今後、鉱山技術書以外の文献とも照らし合わせ、労働組織や労働環境を中心とした鉱山社会史の解明を見据えたい。 鉱山用具についても昨年度に引き続き、『金銀山見立鋪内之様子稼方并諸道具図』(国立国会図書館所蔵)、『見聞雑記』(国立公文書館所蔵)から選鉱関係道具を中心とした画像データを集積した。また、そのような鉱山用具の具体的な使用状況を知るために、一連の作業工程が描かれる佐渡金銀山絵巻においてどのような場面でどのように使用されているのかを特定し、鉱山用具の姿とその使用状況をビジュアルにわかりやすく理解するための手法を探った。 今年度は現地調査も実施した。佐渡市戸地地区を流れる戸地川では、17世紀前期から18世紀初期にかけて、相川金銀山から鉱石を運搬し、水車で粉成を行ったとされる。江戸期の水車場の特定はできなかったが、戸地川の水流の特徴等について把握でき、水車関連用具の理解を深めることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鉱山技術書から選鉱に関するものを中心に約50件の鉱山用語を抽出し、翻刻と現代語訳を行うなど、計画していた作業をおおむね進めることができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は、鉱山技術書から主として選鉱に関する鉱山用語・鉱山用具の集成を試みたが、次年度以降は製錬に関する分析を中心に行う予定である。また、昨年実施した採鉱、今年度実施した選鉱に関する補足調査も並行する。 今年度分析したのは、いずれも18世紀の鉱山技術書であるため、19世紀以降のものも検討予定である。佐渡金銀山の鉱山技術書は、鉱山技術や経営体制の変化を反映させながら18世紀前中期頃から19世紀後期頃にいたる100年以上にわたって改訂を加えながら製作されている。このため、幅広い年代の鉱山技術書を検討することで、より充実した鉱山用語・鉱山用具の集成が可能となるとともに、それらの変化についても探ることができると推察される。 また、今後、石見銀山や生野銀山など他国の主要鉱山における鉱山用語・鉱山用具との比較検証も試みたい。共通するところが大きければ、技術の伝播や交流を探る素材としても活用できると考えられる。 また、鉱山労働者や労働環境などをめぐる鉱山社会史の解明、といった視点でも引き続き鉱山技術書群の分析を進める予定である。
|
Causes of Carryover |
調査・撮影を予定していた複数の鉱山技術書が既にデジタル化され、データの提供を受けることができたため使用残金が生じた。今年度は新たに所在が確認された鉱山技術書など関連史料の調査・撮影を実施したり、調査報告書刊行に向けた準備経費などとして活用する予定である。
|