2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K00887
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
山本 祥隆 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (50610804)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 欧志 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 研究員 (50508364)
浦 蓉子 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (80746553)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 木簡 / 三次元計測 / 自動計測機 / 形態観察表 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4(2022)年度には、主として以下の研究を行い、一定の成果を挙げた。 【①木簡三次元計測手法の探究と自動撮影・三次元計測機開発への着手】 奈文研所蔵の木簡およびレプリカなどを対象に、レーザースキャナーやフォトグラメトリ(SfM-MVS)技術といった各種の計測法を試行する作業を行った。その結果、木簡のような(墨書)文字資料にはレーザースキャナーよりもフォトグラメトリ(SfM-MVS)の方が適しており、より正確な三次元データを取得できるとの予備実験での成果・知見を再確認した。また、その結果に基づき、より簡便・実測かつ安全な計測手法の開発に着手した。具体的には、木簡を固定しつつ、その周りをデジタルカメラが自動で移動しながら撮影し三次元データを取得する、木簡自動撮影・三次元計測機の開発の構想に至った。令和4(2022)年度には、自動計測機の基本的な構造や仕様の検討、および問題点の把握などまでを行った。今後、本格的に自動計測機の開発を進める予定である。 【②木簡形態観察表考案のための基礎的検討・研究】 木簡の加工痕跡や割面、切断痕跡、木取り等の製作工程に関わる情報を抽出し記録するために、木簡形態観察表の考案を構想し、そのための作業を行った。具体的には、研究代表者および研究分担者間で討論を重ね、実際に出土遺物の観察等を行いつつ、基本的な方向性を確立した。今後、木簡形態観察表の具現化および実用化を進める予定である。 上記のような調査・研究を行いつつ、山本祥隆「木簡の年輪年代学、木簡の三次元計測 ―木簡研究の新潮流を目指して―」(河北師範大学歴史文化学院特別講座)や山口欧志「文化財の三次元記録と活用」(奈良文化財研究所編『文化財論叢Ⅴ』)、多様な形式での成果の公表・発信を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4(2022)年度は、主として木簡の三次元計測手法の確立についての調査・研究を推進した。その結果、木簡のような(墨書)文字資料についてはフォトグラメトリ(SfM-MVS)の計測法が適しているという予備実験の成果を再確認し、木簡自動撮影・三次元計測機の開発を目指すという方向性を見出すことができた。ただし、実際に調査・研究を進めたところ想定をやや上回る問題点や課題が出来したこともあり、当初計画していた年度中の計測手法の確立までは至らなかった。 あわせて、木簡形態観察表の考案に関する基礎的な調査・研究も行った。研究代表者および研究分担者間で討論等を重ね、問題点の確認や認識の擦り合わせを進めたことにより、目指すべき方向性をほぼ確立することができた。一方、これについても討論の中で出来した観察ポイントや視角の相違が想定よりもやや大きかったこともあり、形態観察表の実用化にまでは至らなかった。 以上のように、本研究は研究計画調書段階での見込みよりは若干遅滞している部分もあるものの、昨年度には令和5(2023)年度以降の研究を円滑に推進するための指針を確認・確立することができた。令和4(2022)年度は研究初年度でもあり、今後の研究遂行の見込みを得ることができたことから、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、当初計画に比べると若干遅れてはいるものの、初年度である令和4(2022)年度における作業・調査・研究により、その基本的な方向性を確認・確立し、ほぼ軌道に乗せることができたと考える。 令和5(2023)年度以降は、研究計画調書に記載の研究方法に依拠しつつ、ひきつづき調査・研究を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
本研究は、研究初年度であったこともあり、令和4(2022)年度の進捗は当初計画に比べると若干の遅れを生じることとなった。そのため、次年度使用額が生じた。 昨年度の成果により、木簡自動撮影・三次元計測機の開発等の基本方針が固まった。令和5(2023)年度以降はその方針に立脚しつつ、研究計画調書に記載の研究計画を遂行し、適切に執行していく予定である。
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Research Products
(9 results)