2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K00901
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Research Institution | University of Nagasaki |
Principal Investigator |
松尾 晋一 長崎県立大学, 地域創造学部, 教授 (40453237)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 綱吉政権 / 対馬宗家 / 島津家 / 長崎奉行 / 長崎 / 老中 / 異国船 / 太平天国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、つぎの二点の作業を行った。すなわち、①将軍の名代としての役割と長崎奉行として現地レベルで主体的に果たした役割を意識して、新たな「長崎奉行」像の提示を試みること、②幕末の事例ではあるが、情報集積地としての長崎の状況分析を試みた。 まず①については、綱吉政権が異国船への警戒を大名に求めた際に注目した。この時の対馬宗家、島津家の対応、こと長崎奉行との関係を分析した結果、大名にとって長崎奉行は具体的対応の指示を求める対象であったが、長崎奉行は江戸(老中)との関係から主体的な判断で大名に接したことが明らかとなった(松尾晋一「綱吉政権による異国船対応策と幕藩関係」『九州文化史研究所紀要』67号、2024年)。つまり、老中と長崎奉行を一体と見れない場面があったわけで、長崎が江戸と距離を置いた政治の場として機能したことを裏付けていると理解できよう。 つぎに②については、太平天国の戦況に関する情報に注目した。長崎には対馬、薩摩、そして唐人の漂流民などからも情報が伝わり、その内容は地域も限定されておらず、情報源も多様で実に様々なものであった。長崎に唐船が入港せずとも情報集積が実現していたことを確認できた。また、長崎聞役を通して大名家間で頻繁に情報共有がなされていたことが判明した(松尾晋一「太平天国の戦況と長崎―唐人たちの苦難ー」『東アジア評論』16号、2024年)。長崎に入った情報が江戸と共有されていたかの検証は今後の課題であるが、これらから長崎が政治的磁場として機能していたことが掴める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍で予定期限までに終えることができなかった「19世紀中葉の東アジア情勢への日本の政治的反応」(JSPS科研費18K00970)の研究に取り組んだことによる。また、大名家の国元と長崎の御用達との日常における関係の分析に着手できなかったことから、進捗状況としては「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
長崎における幕藩関係で重要な役割を担っていたにも拘らず従来全く手が付けられていなかった長崎奉行家老関係資料の収集を継続する。そして、長崎における大名家間ネットワークの実態を長崎奉行所及び都市社会との関係をふまえて分析を試みる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で予定期限までに終えることができなかった「19世紀中葉の東アジア情勢への日本の政治的反応」(JSPS科研費18K00970)の事業終了を優先したことから、次年度使用額が生じた。今年度予定していたが実施できなかった調査を行う予定である。
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Research Products
(3 results)