2023 Fiscal Year Research-status Report
戦後沖縄における冷戦と占領の社会史の研究:法・秩序・周辺化される身体に注目して
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22K00906
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Research Institution | Okinawa University |
Principal Investigator |
若林 千代 沖縄大学, 経法商学部, 教授 (30322457)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金 美恵 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (00774142)
森川 恭剛 琉球大学, 人文社会学部, 教授 (20274417)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 沖縄 / 米軍占領 / 社会史 / 周辺化 / 身体 / 法 / 秩序 / 人権 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、米軍統治下の沖縄における法・秩序・身体に注目し、占領と冷戦がもたらした社会変容について検証することである。たとえば、米軍人関連の犯罪や反共主義による政治事件に巻き込まれた住民、米軍関連の歓楽街で働き、売買春の対象とされた女性たち、感染症対策の対象にされた住民、「国際児」と呼ばれた米軍人を父とする子ども・母親・家族、また「非琉球人」として管理の対象となった外国人等に焦点を当てている。彼らを取り巻く法と秩序、政策や制度等がどのように形成され、運用されたのか、また、人びとの生活や社会にどのような影響を与えたのかを考察することによって、占領と冷戦の影響を受けた戦後沖縄社会全体の変容を考察する。 2023年度、海外での資料調査については、閲覧許可が得られたミネソタ大学アンダーセン図書館所蔵の国際福祉関連資料について、また、韓国国家記録院での収集・閲覧が可能な資料の調査をおこなった。また、国内での調査としては、国立国会図書館および沖縄県公文書館所蔵の米国公文書他の資料調査、公的な映像や写真などのイメージ記録、沖縄返還前後の新聞調査、琉球大学附属図書館所蔵の琉球列島米国民政府裁判所の裁判記録をデジタル化と分析を中心とする戦後沖縄刑事法制史の基礎調査、米軍統治下の法制史に関する基礎調査、米軍から「非琉球人」として管理の対象とされた外国人の管理等の調査をおこなった。 研究代表者と研究分担者は、共同研究会を開催し、社会変容と制度の変化が人びとの秩序意識に与えた影響の検証をおこなった。その際、研究協力者と連携し、それぞれ、沖縄現代史(政治史・社会史)、刑法学(戦後沖縄刑事法制史)、沖縄のジェンダー/女性や国際人権論、東アジア現代史等の観点から意見交換をおこなった。また、売春と刑事法、政治事件、外国人の地位と処遇等について、成果の一部を論文や口頭発表によって発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者と研究分担者は、2023年度において、いくつかの研究計画の調整をおこないながら、研究をおこなった。 まず、オンライン・ツールを用いて、継続的な共同研究会をおこない、各自の調査研究について共有し、互いの進捗状況を確認しつつ、共同研究を通じて新たな知見を得た。研究代表者(若林千代)は、引き続き、対日平和条約発効後の政治事件について考察すると同時に、研究協力者(親川裕子)と連繋し、戦後沖縄における国際福祉の歴史的検証のため、米国における資料調査(ミネソタ大学アンダーセン図書館)をおこなった。これらの資料は、個人情報保護のための閲覧制限があり、今回の調査ではすべての資料を閲覧することはできなかったが、資料の概要を把握し、重要な資料を閲覧収集することができた。加えて、米国公文書中の占領下の沖縄社会の変容と戦争体験の影響に関連する映像や写真資料の調査、また、沖縄返還前後の社会を記録した新聞資料などの調査をおこなった。研究分担者(金美恵)は、占領期の外国人の法的地位について、沖縄県公文書館や韓国国家記録院での調査等を踏まえながら考察をすすめた。さらに、研究分担者(森川恭剛)は、引き続き、刑事司法関係の裁判記録のデジタル化と翻訳作業を進め、たとえば売買春に関連する裁判や政治裁判等を中心に、仮訳版に基づいた検証をおこなった。これらの研究については、一部を論文や研究ノート、口頭発表として公表した。 2023年度に予定していた米国国立公文書館等における資料調査については、急激な為替変動による渡航費の高騰により妥当なものではなかったため、ミネソタ大学以外への調査は実施されなかった。そのため、調査収集する資料の計画を若干変更し、オンラインによる閲覧可能な資料等について、予備調査をおこなった。そして、調査・閲覧が可能なものを中心に把握し、2024年度に向けて、資料整理を準備した。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、為替市場の変動や大統領選挙前後の首都を中心とする米国内の社会状況を注視しながら、引き続き、実際に米国国立公文書館等の資料館を訪問しての調査研究や共同研究をめざしている。同時に、こうした海外調査が充分に進められない場合や短期間に調査費用をめぐる状況の改善がみられない場合も想定しながら、沖縄県公文書館および琉球大学図書館、沖縄大学図書館新崎盛暉文庫、国立国会図書館、外交史料館等における、米国公文書および琉球列島米国民政府の公文書、琉球政府文書等の検証と収集を継続する。そして、実際に資料の分析や考察をさらに進めて行く。具体的には、琉球列島米国民政府文書や琉球政府の法務部、琉球列島米国民政府公安局や渉外局をはじめとする司法や行政の住民管理の諸制度、外交文書、裁判に関する公文書等である。このうち、公開公文書については、必要に応じてデジタル化処理をおこなう。 米国国立公文書館や米国議会図書館、プリンストン大学等大学図書館他における日本未公開文書の調査については、為替市場や米国の政治状況も見極めながら、実施可能な場合には進めたい。困難な場合には、引き続きオンラインでの収集に努める。また、2023年度に着手した、占領下沖縄の社会変容に関する米国の公的な映像や写真記録の調査についても継続していきたい。 同時に、共同研究会を引き続き開催し、社会変容と制度の変化が人びとの秩序意識に与えた影響について、資料収集の進捗状況を確認しつつ、意見交換をおこなう。また、関連する国内外の学術学会および研究集会に積極的に参加し、調査研究報告を進めたい。
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Causes of Carryover |
2023年度には、それまで新型コロナウィルス感染症のパンデミックのために中断していた海外調査を再開したが、ウクライナ危機によるオイル・サーチャージ等の高騰、また、新たに為替市場の急激な変動という自体によって、渡航費の急激な高騰が生じた。そのため、予定していた米国国立公文書館他での長期の調査をおこなう見通しが立たなかった。 他方で、かねてより資料閲覧申請をおこなっていたミネソタ大学アンダーセン図書館の国際福祉関連資料の閲覧許可が下りたことから、渡航調査の場所をミネソタ大学のみに絞り、尚且、渡航人数や日数も絞り込んで実施した。 ミネソタ大学以外での調査の実施を抑えたことから、差額が生じた。その分については、2024年度の海外調査での旅費や調査費に充てることを考えている。そして、2024年度には、為替市場の変動を見極め、状況を注視しつつ、渡航費の高騰がある程度収まる時期を見計らって、米国国立公文書館や米国議会図書館他における日本未公開文書の調査など、可能な機会をできるだけ見定め、実施可能な場合には進めたいと考えている。
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Research Products
(6 results)