2022 Fiscal Year Research-status Report
マレー半島における民族の枠組みの形成:マレー民族をめぐる相互作用の研究
Project/Area Number |
22K00916
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Research Institution | Meio University |
Principal Investigator |
坪井 祐司 名桜大学, 国際学部, 上級准教授 (70565796)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | マレーシア / エスニシティ / マレー語 |
Outline of Annual Research Achievements |
20世紀中葉のマレー語定期刊行物の分析を通じて、集団間や媒体間の相互作用性に着目しつつ、マレー民族の形成過程の動態を明らかにすることを目指した。 研究成果として、2023年1月の日本マレーシア学会の研究大会において発表を行った。そこでは、1930年代に発行されたマレー語新聞『マジュリスMajlis』を用いて、マレー・ナショナリズムの言説における王権の位置づけを再検討した。スランゴル州の王位継承にイギリス植民地政府が干渉した問題をめぐり、同紙は英語紙を頻繁に引用しながら王権を擁護していた。ここから、民族主義者はイギリスや華人など非ムスリムとの関係構築の窓口として王権を重視していたと論じた。言語や民族をまたいだ論争を通じてマレー民族という枠組みが構想される過程の一端を示すことができた。 また、マレー民族内の民族主義とイスラム主義をめぐる相互作用に関して、1950、60年代に発行されたジャウィ月刊誌『カラムQalam』のデータベースを用いた分析を行っている。これについては、2022年度は成果として発表できなかったものの、次年度に発表を予定している。 くわえて、一般向けの図書『東南アジアのイスラームを知るための64章』(明石書店)に1章を寄稿し、マレーシア地域(マレー半島、ボルネオ)のイギリス植民地期および日本軍政期におけるイスラムの展開を描いた。植民地統治下であっても、王権や行政機構のなかでイスラムの制度化が進む一方、中東の改革思想の影響を受けて近代主義とりこみながら基盤を強めていったことを論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナウィルスの影響のため、2022年度に予定していた海外出張を行うことができず、新たな資料収集ができていない状況にある。このため、当初想定していたほどの成果は出せなかった。ただし、これまでの研究活動において収集した資料は手元にあるため、それらを利用した研究を行った。2023年度も当面はそれを継続しつつ、夏休みに改めて海外出張を行い、新規の資料調査・収集を行う。これにより、前年度の遅れは取り戻せると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、8月にマレーシアに出張を行い、国際学会において研究成果を発表する。その際に、『マジュリス』および同紙と同時代に発行された定期刊行物に関する資料収集をあわせて行う予定としている。くわえて、2024年2月または3月にも海外出張を行い、補足的な資料調査を行いたい。 『カラム』に関しては、その言説からイスラム主義者の主張およびナショナリストとの関係性についての分析を進めている。これについては、国内における研究協力者との連携をとりつつ、研究成果の発表を行う予定である。 それとともに、東京外国語大学における2つの共同研究に参加し、そこでも研究成果を論文として発表する予定である。
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Causes of Carryover |
2022年度に海外出張を行う予定としていたが、コロナウィルスの影響がまだ残っていたため、とりやめた。ただし、移動制限はほぼ撤廃されたため、今年度は計画していた海外出張を改めて行う予定としている。
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Research Products
(4 results)