2022 Fiscal Year Research-status Report
Social transformation seen from mortuary practice at the pre-stage of state formation in Japanese archipelago
Project/Area Number |
22K00974
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
舟橋 京子 (石川京子) 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (80617879)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 人骨 / 改葬 / 断体儀礼 / 服喪抜歯 / 古墳時代 |
Outline of Annual Research Achievements |
九州・山陰および関西・関東の人骨出土遺跡の報告書を収集し、出土状況の情報を収集した。その結果、これらの3地域において、人骨の出土状況を含む考古学的情報から明らかにしうる殯・断体儀礼など葬送儀礼及び改葬行為の変容過程を明らかにした。その結果、西日本でのみ確認されていた、一部分だけの遺体ないしは骨を動かす断体儀礼行為が関東地方においても明らかになるとともに、これまで断体儀礼の存在が1例のみ指摘されていた山陰地方でも複数の事例が確認できた。加えて、改葬行為に関しても各地域で確認されるとともに、改葬と判別の難しい過度な断体儀礼もそれぞれの地域で存在することが明かになった。 その成果に関して、一般社団法人日本考古学協会2022年度福岡大会 分科会2「古墳時代の親族関係と地域社会」において、発表した (舟橋京子, 古墳時代の親族関係と儀礼 , 日本考古学協会2022年度福岡大会研究発表資料集, 113-124, 2022.11.)。 具体的には、改葬行為・断体儀礼はともに古墳時代の時代が下るにつれ、特定の個体を対象として行われていた事例が減少し、複数個体を対象とした事例が増えてくることが明かになった。葬送儀礼の一環として行われている、より限られた個体が対象となる服喪抜歯が時代が下るにつれ見られなくなることを併せて考えると、改葬・断体儀礼を行うような有力下位層では、儀礼自体が特定個人に焦点を当てたものから複数個体を統合した儀礼の比重が高くなっていると推定される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は概ね順調に進展している。理由としては、これまで改葬・断体儀礼の報告されていない地域に関しても報告書の精査を行った結果、かなりの確実な事例を収集することができているためである。一方で、各教育委員会が収蔵している報告書に掲載されていない写真・図面データの収集や研究機関収蔵の人骨の確認に関しては行うことができていない。したがって、報告書を用いた事例収集の成果は予想以上に進展したと言えるが、その反面、実際の写真資料や人骨資料を用いた確認作業はできていないため、上述のような進展状況と判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在はコロナによる移動制限が殆どなくなっているため、本研究の2年目は報告書の資料で改葬・断体儀礼の可能性が考えられた遺跡の人骨の出土写真の取り込み作業を、実際に各地域の教育委員会で行うとともに、実際の出土人骨を各研究機関で観察し、各部位の遺存状況と写真・図面の比較照合により、人骨の出土状況に関する最終確認を行う。 その結果、殯・断体儀礼など人骨の出土状況を含む考古学的情報から明らかにしうる葬送儀礼全体における位置づけを明らかにすることで、葬送儀礼及び改葬行為の時間的・空間的変容と列島国家形成期前段階の社会におけるその意味を明らかにする予定である。 これらの成果を総合し、一定の成果の出た地域に関しては論文の形にまとめる。
|
Causes of Carryover |
2023年3月に出張1回を計画していたが、家族の発熱によるコロナ感染疑いにより出張ができなくなったため、1回分の出張費を使用できず翌年度に出張を持ち越しとしたため。
|
Research Products
(2 results)