2023 Fiscal Year Research-status Report
解剖学的方法に基づく日本列島の各時代人類集団の正確な身長推定
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22K01005
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
佐伯 史子 新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 助教 (20780216)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 自然人類学 / 縄文時代 / 中・近世 / 人骨 / 身長推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
身長は、個体や集団の特徴をあらわす最も基礎的な身体情報の一つである。過去の人々の身長を明らかにするためには遺跡出土人骨の身長推定が必要となるが、日本列島集団を対象とした従来の身長研究には、結果の正確性に検討の余地が残されていた。本研究では、古人骨の身長を最も正確に推定できる二つの解剖学的方法(骨格復元法とFully-Raxter法)を駆使して、縄文時代から近世までの多数の人骨を調査し、日本列島の各時代の人々の身長をできるだけ正確に復元することを目指している。 2023年度は、以下の3つの研究を実施した。(1)縄文時代人の身長を最も正確に推定できる数学的身長推定法の探索:高い正確性が期待される骨格復元法で求めた身長を基準として、Pearson式や藤井式などの数学的身長推定法で算出した値との差異を検討し、縄文時代人の身長推定における数学的身長推定法の妥当性を検討した。また、その結果を論文にまとめるべく準備を進めた(2022年度からの継続研究)。(2)東京都港区湖雲寺遺跡から出土した江戸時代人骨群のFully-Raxter法に基づく身長推定:新潟医療福祉大学に保管されている湖雲寺遺跡から、頭骨・椎骨・下肢長骨・足骨が完存する骨格を選び出し、Fully-Raxter法で身長を推定するための骨計測を実施した(2022年度からの継続研究)。(3)愛媛県上黒岩第2岩陰から出土した中・近世人骨の身長推定:上黒岩第2岩陰遺跡から出土した中・近世の成人男性人骨1体と成人女性人骨1体について、身長推定を含む包括的な骨考古学的調査を実施した。大腿骨から推定した身長は、成人男性が158.9cm、成人女性が145.9cmであった。四国山間部の中・近世の人骨出土例は少なく、本資料は同地域における当該期の人々の様相を探る上で貴重な資料であると思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
縄文時代人については、当初予定していた資料について、2022年度までに骨格復元法に基づく身長推定と数学的身長推定を終えており、その成果をもとに、縄文時代人の身長推定における数学的身長推定法の妥当性を検討する論文の作成を進めている。また、研究計画に則り、解剖学的身長復元に必要な人類学的骨計測器具の購入を完了し、研究環境を整備して、人骨の計測データを収集している。さらに、本研究課題に関連して、四国山間部の中・近世の貴重な人骨について身長を調査するなど、人骨資料を用いた身長研究を推進している。本研究計画はおおむね順調に進行しており、 2024年度も当初の計画に沿って研究を進める見通しを得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、当初の計画に従い、以下1~3を中心に研究を推進する。(1)2023年度の継続研究として、縄文時代人の身長研究に関し、骨格復元法で求めた復元身長を基準に数学的方法による推定身長結果の妥当性を評価し、成果を論文にまとめてオープンアクセスジャーナルに投稿する。(2)新潟医療福祉大学が保管する江戸時代人骨群の頭骨・椎骨・大腿骨・脛骨・足骨を計測し、Fully-Raxter法に基づき身長を推定する。(3)国立科学博物館や東北大学などの研究機関を訪問し、各時代の古人骨について上記2と同様の方法で計測を実施し、Fully-Raxter法および数学的方法により身長を推定する。
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Causes of Carryover |
おおむね当初計画の通りに研究費を使用しているが、体調不良によりのべ1ヶ月間入院・加療したため、予定していた資料調査の一部を実施できず、次年度使用額が生じた。これらについて、2024年度に資料調査を実施して使用する予定である。
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