2023 Fiscal Year Research-status Report
博物館で用いるためのサンプリングバッグによる放散試験方法の開発
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22K01009
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Research Institution | Independent Administrative Institution National Institutes for Cultural Heritage Tokyo National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
古田嶋 智子 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, 客員研究員 (30724588)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
犬塚 将英 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, 副センター長 (00392548)
鈴木 昌樹 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 森林研究本部 林産試験場, 主査 (00446311)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | サンプリングバッグ / 放散試験 / 博物館環境 / 資料保存 / 酢酸・ギ酸 / 化学物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
製作した試験用バッグ(以下、バッグ)を用いて、各設定条件下における放散試験を実施し、データの収集をおこなった。 1.環境試験室におけるバッグの性能評価 昨年に整備を進めた環境試験室にてバッグの性能評価を目的に、床面を試験体とした放散試験を実施した。環境試験室は、床に放散源となるナラ材のフローリングを敷き、試験中は空調と加湿装置により温湿度を制御した。 ①容積:10Lと30Lのバッグを用意して試験を実施した。30Lバッグは10Lバッグと比べて漏気が大きくなった。バッグの設置など取り扱いが容易であることからも、10Lバッグを用いて放散試験を進めることとした。②気密性:放散試験の状況下でバッグ内の二酸化炭素濃度測定を行い、換気回数を算出した。底面が平滑な場合は高い気密性を示したが、実際の使用が想定されるフローリング材など底面が平滑でない場合は気密性が低下した。しかし、平滑でない場合も同じ環境下であれば一定の換気回数を得られることを確認した。③経時によるバッグ内酢酸濃度:バッグを床面に設置し決められた時間まで静置し、その後にバッグ内の空気捕集を行った。試験で得た各時間のバッグ内酢酸濃度の比較には、換算した放散速度を用いた。その結果、異なる経過時間でも放散速度は近似した値を示し、②の結果とあわせて本放散試験の再現性を確認することができた。 2.化学物質測定方法の検討 測定方法として検知管の利用を視野に入れ、対象化学物質である有機酸は検知管とインピンジャ、ホルムアルデヒド・アセトアルデヒドは検知管とDNPHによる空気捕集を行った。その結果、有機酸は博物館用の低濃度域まで測定可能な検知管を利用することで検出可能であった。今後、検知管とインピンジャで得られた結果の相関について検討を進める。 3.収蔵庫におけるバッグ試験の実施 博物館収蔵庫にて、床面からの放散試験及び換気率測定を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画にあった環境試験室での放散試験や化学物質測定方法の検討については、予定通り実施し、データを蓄積できた。また、放散試験の方法も大部分を確立することができた。これらの成果から、前年度までの遅れは取り戻せたと言える。しかし、化学物質測定方法など課題が残るものもあり、またチャンバー法による環境試験室の床材を試験体とした材料試験が未着手となったため、「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も継続してバッグを用いた放散試験を実施し、データを蓄積する。バッグの形状、固定方法については、さらに検討・改良を重ねる予定である。 今年度から継続する課題である化学物質測定方法については、データ数を増やして検討する。また、未着手となっているチャンバー法による環境試験室の床材を試験体とした材料試験を実施し、他の放散試験方法との相関について確認する。
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Causes of Carryover |
当該年度の実支出額は支払い請求額を上回っており、次年度に使用額が生じた要因は前年度の未使用額が大きく、消化しきれなかったためである。 次年度は、研究成果発表として国際学会への参加を予定しており、当初計画より旅費の支出が大きくなることが見込まれるため、次年度使用額での補填を計画している。
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Research Products
(1 results)