2023 Fiscal Year Research-status Report
ホロコースト・ミュージアムにおける災厄の定型化:視覚メディアと展示デザインの課題
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22K01017
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
横山 佐紀 中央大学, 文学部, 教授 (70435741)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | メモリアル・ミュージアム / 記憶 / 負の遺産 / ホロコースト写真 / ハンセン病 / 多文化共生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究が対象とする合衆国ホロコースト・ミュージアム(以下、USHM)との比較のために、本年度より、国内のメモリアル・ミュージアム、国立ハンセン病療養所邑久光明園の社会交流会館における展示、資料調査に着手した。 USHMは、ホロコーストの現場を欠きつつも、効果的な展示デザインによってこの出来事を伝えるメモリアル・ミュージアムである。これに対し、日本の国立療養所に設置されているハンセン病関連ミュージアム(社会交流会館)は、ハンセン病患者の隔離施設であった場所に設置され、負の出来事の実態を来館者が実感をもって体験することができることが特徴である。そこにたどり着くまでの不便さをも含んで「場所」がきわめて重要なメディアとして機能している点においても、社会交流会館はUSHMとは対照的なミュージアムである。 その一方で、邑久光明園社会交流会館の展示室は一室のみであり、そこに常設展と小さな企画展コーナーが設けられている。開館時のプランを尊重し、常設展示はほとんど変更されていない。ここには、社会交流会館が、場所のもつ力と学芸員の研究成果としての展示との間でいかにバランスを取り、「現場に立つミュージアム」としての役割を果たしうるのかという課題の一端が表れている。また、社会交流会館の事業には入所者自治会の協力が不可欠であること、入所者の高齢化に伴い資料収集をいかに進め活用するのかといった事柄が、療養所の将来構想とも関連する課題であることも明らかとなった。 以上の調査において、ホロコーストと日本のハンセン病問題には優性思想など共通する論点があることが確認された。これに伴い、メモリアル・ミュージアムに関する文献、日本におけるハンセン病に関する資料(法律、宗教、医学関連、自治会刊行物等)、アメリカの隔離療養所に関する資料、ハンセン病の表象(絵画作品、写真など)に関する資料を渉猟した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はアメリカでの調査を行うことができなかったため、当初の計画よりはやや遅れている。一方で、国内のメモリアル・ミュージアム(邑久光明園社会交流会館に加え、国立ハンセン病資料館)での調査を開始し、関連する国内外の文献も一定程度渉猟することができたため、メモリアル・ミュージアムをより広い視野から検討する方向性を見出すことができたものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の方向で研究を進める予定である。なお、調査にあたっては個人情報の保護に最大限の注意を払うものとする。
(1)海外調査:アメリカでの調査を実施する。2024年7月から8月にかけてアメリカ本土唯一のハンセン病療養施設であるカーヴィル療養所およびナショナル・ハンセン病ミュージアムで調査を行い、メモリアル・ミュージアムとしてのハンセン病関連ミュージアムの日米の比較を試みる。併せて合衆国ホロコースト・ミュージアムの展示調査を行い、出来事の現場を欠く大規模なメモリアル・ミュージアムの展示デザインを検証する。(2)負の出来事の表象の調査:合衆国ホロコースト・ミュージアムについては、展示における写真の使用に焦点を当てるが、ハンセン病関連施設においても同様の問題を検証する。「負の出来事の表象」との観点に立ち、ハンセン病がこれまでどのように表象されてきたのかを、絵画作品や19世紀の医学写真を含めて検証する。(3)ハンセン病関連ミュージアムでの資料調査:社会交流会館の担当学芸員の協力のもと、引き続き、展示調査、収蔵資料調査、文献渉猟を行う。国立ハンセン病資料館でも文献調査を進める。
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Causes of Carryover |
当該年度に予定していた海外出張を実施することができなかった。2024年度7月から8月にかけて、ルイジアナ州カーヴィルのハンセン病ミュージアム、ワシントンの合衆国ホロコースト・ミュージアム、ニューヨークのYIVOにおける出張を計画しており、先方の担当者やハンセン病回復者家族とのインタビューを調整中である。
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