2023 Fiscal Year Research-status Report
Study on Solar Radiation Effects on Precipitation Disturbances
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22K01039
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
足立 幸穂 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 研究員 (50512448)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 大雨 / 降水システム / 日射影響 / 数値モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の実験から、対象としていた現実事例の降水イベントにおいては、現象がもつ非線形的特性により、降水の計算とは直接関係しない小規模なモデルの変更でさえも、実験結果に無視できない程度の影響を及ぼす可能性が示された。本課題では、実際に起こった現実事例を対象とする方針自体に変更はないが、現実事例を対象とした実験に先立ち、実事例よりも非線形性が小さいと期待される準理想条件下での降水事例を対象に、雲物理スキームやスキーム内の設定の違いに由来する計算結果への影響理解を優先することとした。 事例としては、準理想条件でのスコールラインケースを取り上げた。One moment bulkスキーム(Tomita, 2008)では、雲水の粒径分布の切片パラメータの感度が大きく、スコールライン形成期の降水量が Two moment bulk スキーム(Seiki and Nakajima, 2014)よりも多い特徴がある。一方、 Two moment bulk スキームは、One moment bulk スキームに比べて、雲氷が大気中に残りやすく、スコールライン形成期の降水量は少ない。スコールラインの発達期以降では、両者のスキームの間の降水量の差は小さくなる。ただし、蒸発冷却に伴う下層の温度低下量はOne moment bulkスキームの方が大きく、この結果、コールドプール、および、スコールラインの移動速度の違いをもたらす。 One moment bulkスキームとTwo moment bulk スキームの違いである上空の雲氷は日射影響の見積り時の感度にも違いが出てくる可能性も考えられる。今年度実施した、基礎的な感度実験での知見を考慮した上で、実際の降水事例に対する日射影響についての影響評価を実施する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度実施した実験の結果が想定と異なる結果であったため、計画していた感度実験の前に、基礎的な実験などを行なっており、当初の計画よりは遅れている。しかしながら、今年度、得られた知見は、本実験を実施する上で重要なプロセスであり、ここでの結果を踏まえながら、計画に沿って進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画からは少し遅れているものの、計画に従って進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
研究補助員の人件費については、想定していた方の退職と代わりの方を確保できなかったため使用しなかった。次年度以降の不足分に充てる予定である。また、計算機利用料を積算していたが、今年度実施した実験は、計画段階で予定していた実験に比べて必要なリソース量が少なかったため、今年度は本予算を使用しなかった。予定していた計算は来年度以降に実施予定であるため、その際に使用する予定である。
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