2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K01104
|
Research Institution | Hokusei Gakuen University Junior College |
Principal Investigator |
風戸 真理 北星学園大学短期大学部, 短期大学部, 准教授 (90452292)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
|
Keywords | モンゴル / 牧畜 / 遊牧 / 移動 / 森林草原火災 / 災害 / ゲル / 天幕 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画は、交付申請書の「9.補助事業期間中の研究実施計画」に記載のとおり、遊牧文化の現代的展開について情報化に注目しながら説明するために、国内外でのフィールドワークにより資料を収集し、学会発表や論文発表をおこなうものである。2022年度において実施した研究としては、新コロナウィルス感染の影響により上記実施計画を一部変更して、遊牧文化の現代的展開についてモンゴル国でフィールドワークをおこない、かつ、これまでに収集しておいたフィールドワークデータを分析して英語論文を発表した。 具体的には、モンゴル国にて(別の研究経費による旅費支出となるが)4日間のフィールドワークをおこなった。調査対象は、遊牧民の移動を支える住居であり物質文化である天幕「ゲル」である。ゲルについて、これを移動させながら使用する場合/移動させずに定住的に使用する場合でのメンテナンス方法の違い、天幕の材料が木材と布類であることによる風化耐性の弱さ、そして牧民が建設するゲル型の固定建造物の可能性、について観察および聞き取り調査をおこなった。 また、これまでに収集しておいたデータを分析して、英語論文「Forest-steppe Fires as Moving Disasters in the Mongolia-Russian Borderland」を雑誌『Journal of Contemporary East Asia Studies』(Taylor&Francis group)に発表した。東アジアでは毎年、森林草原火災が発生しているが、これが季節風に吹かれてロシアから中国まで国境を越えて飛び火している状況を指摘するとともに、モンゴルの牧民が受ける具体的な被害と対応を記述した。そして牧畜地域は、情報化が進む現代においても、人間の知識や技術では対抗することが難しい自然災害の脅威にさらされていることを示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実施計画に記載のとおり、新コロナウィルス感染が続いたために当初の予定を変更して、主に文献研究をおこない、国内外での予定していたフィールドワークの一部としてモンゴル国で短期フィールドワークをおこなった。 文献研究としては、ノマド、都市、国家などに関する社会理論をテーマとしたオンライン研究会にて、研究遂行に必要な資料を集中的に検討した。フィールドワークに関しては、感染症対策のために移動や対面をともなう調査一般がしにくく、中国・内モンゴルはコロナをきっかけに社会が大きく変化したため、現地調査を控えた。とはいえ年度末にはモンゴル国を訪問し、激しい物価高騰の下にある遊牧社会の変化を実地で確認し、次年度以降の調査課題を把握できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題については概ね、当初予定していた2023年の計画を進めていく予定である。 まず遊牧民のSNS利用については、モンゴルでは新コロナウィルスに対する防疫が重視されなくなった2022年3月以降、Facebook上でのグループ活動や新たなSNSの流行が下火になっているように見える。このため現地調査をおこなって、最新のSNS利用のあり方を、世代ごと、居住地ごとに把握する。 次にゲルの利用については、ゲルをどの程度移動させるのか、ゲルのメンテナンス方法、交換パーツとその耐性、などについてモンゴル国内の草原と定住地、定住地の中でも牧畜地域と都市(ウランバートル)で比較しながら観察する。中国の少数民族地域で調査が可能であるのかも情報収集する。 その他の遊牧的な文化要素についても、代表者がこれまでに調査してきたものを中心に、コロナ後の変化を観察していく。得られたデータは随時学会等で報告していく。
|
Causes of Carryover |
国内外での調査および学会・研究会への対面参加の予定を当初、立てていたものの、新型コロナウイルス感染拡大を受けて出張が難しい時期があった。このため、経費のうちでもとくに旅費の支出が縮小し、未使用額が生じて次年度使用額が生じた。この分を次年度に繰り越して、本研究計画を実現するための出張経費として使用する予定である。
|
Research Products
(1 results)