2022 Fiscal Year Research-status Report
研究インテグリティと自由の秩序構想との連関についての規範理論の基盤構築
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22K01126
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
山田 八千子 中央大学, 法務研究科, 教授 (90230490)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 研究インテグリティ / 経済安全保障法 / 利益相反行為 |
Outline of Annual Research Achievements |
科学者コミュニティと科学者を取り巻く法的規制全般について、領域を区分して、立法等の状況を確認した。非居住者との取引に関わる外為法(外国為替及び外国貿易法)第25条等適用をめぐり研究場面における適用領域の射程(たとえば基礎研究(Fundamental Research)にも及ぶのか)や外為法の規制リストの拡張の適否が、研究活力の確保、とりわけ基礎研究を制限する措置への影響との関連で問題となることや、特許出願公開制度の制約については、制約による技術流出防止の利点のみならず、出願人である大学等研究機関や研究者に対する影響が大きいことも確認された。 2022年5月に成立した経済安全保障推進法の4章の重要先端技術の開発推進は、について、大学における自由な学術の発展に資する形で運用されるべきであり、研究インテグリティに関連する論点が、1)同法4章62条に基づき設置される官民の「協議会」は、官民パートナーシップを目指すものであるが、協議会メンバーには機微情報の罰則つき守秘義務が課されるものであり、その内容、運用を含めた具体的なあり方が、科学者コミュニティにとって透明性があり答責性がある形で明らかにされる必要がある。2)、5章の非公開特許制度については、デュアルユースを踏まえ、学術活動に与える影響を配慮した内容や運用が求められると同時に、規定される損失保障の実効性の確保がされているかにも留意する必要があり、日本版バイドール制度(産業技術力強化法17条)にも関連しうる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
科学者コミュニティと科学者を取り巻く法的規制については、本年度研究したように、様々なものがあり、それぞれ学術コミュニティに与える影響も様々であることが資料などで確認され、本研究課題の問題設定が適切であることが確認された。この点、規制の必要性と共に、規制による研究者の研究活動の自由への影響のバランスを慎重に考える必要がある。科学者コミュニティをめぐる法的規制は、2022年度に対照としたものよりも拡がりを有しているので、検討の範囲を拡げると共に、研究活動に与える影響についてもより詳細に検討する必要があると考えたため、概ね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策については、2022年度では十分に検討できなかった研究者等が認識していない技術流出の防止について、検討を進める予定である。不正競争防止法による営業秘密保護は制度としては、法制度としてはどのようなものが提供されているのか、企業との比較では相対的に公開性が高い大学の環境において営業秘密の法律要件の充足の問題点がないのか、機密情報や機微情報へのアクセスとの関係では、規制が留学生や外国人研究者等の地位保護や権利保障にマイナスの影響を与えるかどうかの検討が必要であって、このため、2022年5月施行が開始した外為法25条1項に基づくみなし輸出管理の明確化(2022年5月1日から適用)の内容も検討し、統合的な学術コミュニティ法制について経済安全保障、研究インテグリティの関係からの検討を続ける予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していた文献の価格高騰等により当該年度の支出が当初の見込みより増えることが想定されたため、使用額の増額を申請して認められたが、2022年度後半にキャンパス移動に伴う作業のため当初予定していた研究時間が確保できず想定していた購入予定文献数が減少したためであり、予定していた文献は次年度購入予定である。
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