2022 Fiscal Year Research-status Report
Comparative Study on Finnish Parliament's Control over Delegated Legislations
Project/Area Number |
22K01128
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Research Institution | Momoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
田中 祥貴 桃山学院大学, 法学部, 教授 (20398548)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | フィンランド議会 / 憲法委員会 / 委任立法 / 行政統制 / 違憲審査 / 憲法保障 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代の立法過程は、いずれの先進国においても、政府主導の形式が継続・固定化している。我が国も例外ではない。この点、政府の権限強化は図られても、その政府に対する議会の統制機能は不十分なままであり、今後の制度改革が待たれている。とりわけて、我が国は、諸外国と比較して議会機能強化に向けた改革が遅れている感が否めない。そこで本研究は、政府による立法過程の支配構造を克服し、我が国で議会制民主主義を甦生させることを目的とするものである。具体的には、フィンランド議会を比較法研究の対象としつつ、我が国における議会の政府統制機能を向上させる制度設計を研究している。主に、研究対象にしているのは、フィンランドの憲法委員会である。憲法規範に依拠しながら、客観的かつ合理的な政府統制を実現する議会委員会で、フィンランドでは最も高く評価されている委員会の一つである。本年度は、まず、その憲法委員会の制度枠組の全容を調査・研究することから開始している。如何なる歴史的経緯から形成され、如何なる目的を有する機関であり、如何にして有効な政府統制機能を担保する枠組を構築しているのか、当該制度に関わる一連の要素を精査し、その全容を把握することが研究初年度の目的である。制度の全容把握から個別的各論へと研究を推移させる事情から、この研究成果が今後の研究推進において重要な意義を有する。本年度は、かかる目的の下、フィンランド現地での情報収集及びその分析を行った。我が国では憲法委員会が未知の存在である事情から先行業績もない中で、就中、フィンランド議会憲法委員会の顧問から受けた情報提供、及び議会図書館で収集した資料は、憲法委員会を理解する上で非常に重要な情報源となった。これらの情報の分析・評価をベースに、今後の研究遂行の有効性を担保していく予定ある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フィンランド議会の憲法委員会制度が、我が国ではまったく未知の領域にある事情から、本年度は、まず、議会による政府立法への統制という文脈において主導的な役割を果たしている憲法委員会の「制度枠組」の全容を俯瞰することにまず専心してきた。とりわけ、フィンランドの憲法委員会顧問から、直接、当該委員会の関連資料を提供してもらい、また、フィンランド議会図書館で収集してきた議会資料によって、当該委員会制度の概要把握がかなりの程度で実現できた。初年度の目的は概ね達成できたと評価してよい。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果を踏まえつつ、次年度は、その制度を如何に効果的に機能させるのか、本研究の主対象となる「運用問題」について研究を行う。就中、政府立法の統制を所管する専門委員会がこれまでに効果的な制度運用を担保してきた要因が何であるのか、その現実的な運用方法に関する実践的研究を行いたい。そして最終年度では、以上の実践的な制度運用に関する研究を踏まえて、我が国における国会の政府統制をめぐる比較法研究を総括したい。つまり、以上の研究成果を我が国の国会制度をめぐる改革に如何に敷衍し活用するのか、これまでの比較制度研究の総括を図るものである。
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