2023 Fiscal Year Research-status Report
行政過程におけるデジタル情報技術の使用と行政法総論の双方向的考察
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22K01133
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 隆司 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (70210573)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
巽 智彦 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 准教授 (10609126)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | デジタル情報技術 / 行政法総論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、行政過程におけるデジタル情報技術の使用と行政法総論との間の双方向的な考察を行うものである。具体的な領域として、(a)行政手続、(b)行政上の行為形式・実効性確保、(c)行政調査、(d)行政組織、(e)公私協働・私行政法などを取り上げる。 本研究の2年度目に当たる2023年度は、いずれの領域についても、引き続き問題・課題・論点の探索と基礎的な資料の収集に努めた。そして、具体的な成果も複数挙げることができた。「雑誌論文」欄記載の巽の著作5点は、いずれも、ドイツ法との比較を交えつつ、行政のデジタル化にかかわる法制度ないし法分野の各論的な分析から、行政法総論への示唆を抽出し、また逆に行政法総論の観点から各論分野を秩序付ける、双方向的な考察を行ったものである。ドイツの有力な行政法雑誌への投稿も含まれている。研究では、近時改正された個人情報保護法、デジタル行政手続法、近時立法されたデジタル規制改革推進法を、統合的な視点から多面的に検討し、何が真に変わったか、あるいは、何を変えることが必要かを、精緻に分析した。 こうした分析を通じて、一般に行政のデジタル化と言われることを、行政法総論のより基礎的なレベルの中に位置づけ、また、基礎的なレベルから検討することにより、主に(a)行政手続、(d)行政組織の研究を深めることができた。また、次の段階として、(e)公私協働・私行政法の研究への展望も開くことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この間、行政法総論のいずれの領域についても、問題・課題・論点の探索と基礎的な資料の収集に努めており、その過程で、関連する問題について知見を有する研究者との意見交換を行い、次年度以降の研究の方向性に関する示唆を得た。具体的には、2023年9月に、稲谷龍彦氏(京都大学)および渡部友一郎氏(弁護士)と、行政のデジタル化の現状と法制面の課題について、同10月に根津洸希氏(新潟大学)および仲道祐樹氏(早稲田大学)と、刑事法システムがAI時代の社会統制手法たりうるかについて、2024年2月に、Alexander Rossnagel氏(カッセル大学)と、企業および行政官庁に対するデータ保護について、それぞれ意見交換の機会をもった。他方で、本年度は新型コロナウイルス感染症およびロシア・ウクライナ間の戦争の影響が未だ続くものの、研究代表者・分担者が主として研究対象としているドイツないしヨーロッパに渡航することも可能となり、2023年5月に両者がドイツ・ハイデルベルク大学に渡航し、海外所在の資料の探索や海外の研究者との交流を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
この間、行政法総論のいずれの領域についても、問題・課題・論点の探索と基礎的な資料の収集に努め、次年度以降の研究の方向性に関する示唆を得ており、来期はそれを具体的に考察して、可能な限り業績の公刊に結び付けていく予定である。すなわち、(a)行政手続、(b)行政上の行為形式・実効性確保、(c)行政調査については、行政によるAIの利用や、逆に民間で利用されるAIの行政による規制について、一方で電気通信、個人情報保護、プラットフォームビジネス規制といった、デジタル情報技術に密接にかかわる法制度ないし法分野の各論的な分析から、他方でドイツ法・ヨーロッパ法をはじめとする比較法的な分析から、考察すべき問題を明確化していく。また、(d)行政組織や(e)公私協働・私行政法の領域についても、放送をはじめとするメディアの法規制、プラットフォームビジネス規制といった各論分野における「共同規制」と呼ばれる潮流や、ドイツ法・ヨーロッパ法におけるその現れなどを考察し、研究会の開催や小論の公表といった具体的な研究成果に結びつけていく予定である。
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Causes of Carryover |
4000円余りの端数が生じたものであり、今年度も、特別に使用計画を変更する必要はなく、旅費、図書購入費等に充てる。
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Research Products
(6 results)