2023 Fiscal Year Research-status Report
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22K01144
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
望月 穂貴 早稲田大学, 法学学術院, その他(招聘研究員) (90844126)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 緊急事態 / ポッセ・コミタタス / ポッセ・コミタタス法 / ミリシア |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、前年度に研究したマーシャル・ローの法理にも関連している軍隊の法執行への投入に関して研究を行った。その中でもポッセ・コミタタスの概念に焦点を当てている。 古来イングランドにおいては、自由人は有事にミリシアに編制される一方、平時にはシェリフの指揮下で法執行活動をなす義務があった(ポッセ・コミタタス)。このような考え方を軍隊に当てはめ、軍隊も「市民」なのだから法執行活動に協力する義務があるという理論が18世紀までに成立した。 アメリカ合衆国においては、軍隊が広汎に法執行活動に投入されてきた歴史がある。一つには、逃亡奴隷法の執行のために上記のような理論を活用したということがある。他方、軍隊の法執行投入を抑制する法律として、「合衆国陸軍(Army)のいかなる部分についてもポッセ・コミタタスまたはその他として法執行の目的のために投入することは合法ではない。」と定める1878年のポッセ・コミタタス法が有名だが、この法律は南部の再建(リコンストラクション)に軍隊投入を禁ずるという意図で制定されており、実際問題としてはそれ以外に対する投入が阻まれるわけではなかった。 ただし、ポッセ・コミタタスの理論には「市民としての軍人」というべきコンセプトが付随しており、法執行上従うべき規範には当然軍人も従わなければならない。問題は、かつてはそうした法執行に対する規制が弱体であったことにある。 軍隊による法執行の概念は、緊急事態(主として反乱など)の考察として重要のみならず、海外における軍隊の治安活動等を考えるにあたっても重要になると考えられ、今後もさらに検討を行いたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要欄記載の通り、前年度の研究に関連するテーマを検討することができ、口頭報告のほか、論文の投稿も行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、緊急事態の議会統制に関する検討を前年度に引き続き行うほか、ポッセ・コミタタスの概念に関連するミリシア、特にアメリカ大統領のミリシア統制権についてさらに検討を行いたい。また、可能であれば州の緊急事態制度に関する検討も行いたい。
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Causes of Carryover |
想定よりも出張経費が少なかったこと、また、前年度にも次年度使用額が生じていたことによる。 次年度は、研究発表等のためにより多く旅費を費消することになると思われる。
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