2022 Fiscal Year Research-status Report
Revisiting the Roles of Judiciary and Exective in International Cooperation in Criminal Matters: A case study of European Arrest Warrant
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22K01179
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
洪 恵子 南山大学, 法学部, 教授 (00314104)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 欧州逮捕状 / European Arrest Warrant / 国際刑事協力 / 犯罪人引渡制度 / extradition / カタロニア / 分離独立 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は「国際刑事協力における行政府と裁判所の役割分担の再検討-欧州逮捕状を手がかりとして」である。第二次大戦後、刑事分野における国際協力は伝統的な国家間の互恵的な制度から国際犯罪の規制のための国際協力の制度へと変化してきた。しかし協力を行うかどうか決定を行う際に行政府(行政権)が多くの裁量を持つこと、また国内の裁判所(司法権)の役割は限定的であるという構造に変わりはなかった。これに対して、2002年欧州逮捕状枠組決定で導入された欧州逮捕状(European Arrest Warrant)は政府の裁量を排除し、手続きを「司法化した」と言われ、国際刑事協力を客観化するものとして評価されてきた。しかし実際にこの制度が運用されるようになると、事案に内在する政治性から依然として政府の判断も重要であることが明らかになってきた。 本研究ではスペイン・カタロニア地方の分離独立の指導者たちに対して発行された欧州逮捕状をめぐって生じた国家間の対立に関する関係当局の見解の相違を検討することを通じて、国際刑事協力における各国の政府と裁判所の適切な役割分担はどうあるべきかを考察することを目的としている。より具体的には、2017年10月以来、プチデモンを始めとするカタロニア独立運動の指導者たちに対してスペイン政府により発行された欧州逮捕状(European Arrest Warrant, EAW)をめぐって、今日まで5年以上にもわたって争われている問題である。カタロニア人たちが庇護を求めたベルギーやドイツなどでの司法判断に加えて、つい先ごろ2023年1月31日に欧州司法裁判所がスペイン政府の請求によって先決的判決を下した。2022年度はこうした一連の司法判断の分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題が対象とする問題は現在進行中の問題であり、訴訟が提起されたベルギーなどにおける現地調査が必要であるところ、COVID19の影響もあり、海外出張を企画することが難しかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、カタロニア人指導者たちに対して発行された欧州逮捕状をめぐってくだされた司法判断や専門家による分析を検討することに加えて、ベルギーでの現地調査を実行する予定である。すでに関係者への調査依頼を行っており、おおむね好意的な返答があったので、海外出張により多くの知見を得られると期待している。
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Causes of Carryover |
2022年度にはベルギーにおける調査ができなかったため。
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