2022 Fiscal Year Research-status Report
刑事手続における「事実」と「遮断効」の範囲(1)―身体拘束にかかる諸原則の射程―
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22K01203
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小島 淳 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (80318716)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 刑事訴訟法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年4月に刊行された判例解説(「住居侵入・窃盗での前訴の第1審判決後にされた常習特殊窃盗と前訴確定判決の一事不再理効(最一小決令和3・6・28)」令和3年度重要判例解説(ジュリスト臨時増刊1570)152-153)では、一事不再理効の「時間的範囲」についての最高裁の判断について解説した。その後、これを踏まえてさらに検討を進め、同年11月の「刑事法総合研究会」において、その検討結果の一端を報告した(未公刊)。そこでは、主として「時間的範囲」と「客観的(事物的)範囲」の区別について検討し、同決定を踏まえて考えると、一事不再理効について検討する場合には、まずは時間的範囲を検討する必要があり、その点をクリアーして初めて客観的(事物的)範囲の検討に入ることができることになるという点に触れ、また、そうしたことは、身体拘束の場面においても似たようなことが言え、身体拘束における遮断効の生じる事実の範囲についても同様の発想により絞りをかけることができるようになるのではないかといった点についても言及した。 また、前年度(2022年2月)に刊行された「併合罪関係に立つ事実の間での逮捕・勾留について―逮捕前置主義、逮捕・勾留の一回性の原則との関係を中心に―」(研修884・3)を踏まえてさらに検討を進め、手掛かりとなりうる文献の収集にも従事した。 さらに、直接的には「身体拘束」の遮断効ではないが、本研究の究極的な目的を達成するのに必要となる「裁判」における遮断効についても検討を進め、その一環として、二重の危険に関するDenezpi v. United States, 142 S. Ct. 1838 (2022)についての簡単な紹介を執筆した(これは2023年度中に「比較法学」(57巻)に掲載される予定である)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度においては、主として「令状審査の対象となる事実の範囲」及び「逮捕前置主義における『被疑事実の同一性』」について検討し、同年度末には関連する論考を公表する予定となっていた。同年度中に執筆のための資料の収集等の下準備を一定程度進めることはできたものの、2023年5月現在でまだ論文の形で研究成果を発表することができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のとおり、「令状審査の対象となる事実の範囲」や「逮捕前置主義における『被疑事実の同一性』」に関しては、2022年度中に資料の収集等の下準備は一定程度進めることができているため、そうしたものも消化しつつ、もともと2023年度中に研究予定となっていた「逮捕勾留の一回性の原則の射程」の検討と併せて検討を進め、少なくとも前者の点についての研究成果を2023年度中に活字の形で公表することを目指す。
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Causes of Carryover |
関連する図書(主として洋書)の発注や国内出張(学会・研究会)にかかる出費が想定を下回ったことが次年度使用額が生じた理由の中心である。 2023年度に関しては学会・研究会についても対面開催(対面参加)が増える見込みであり、かつ、図書や備品(プリンターのトナーを含む)等にかかる出費も増えることが想定されるため、次年度使用額と翌年度分として請求した助成金をそれにあてることを計画している。
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