2023 Fiscal Year Research-status Report
刑事手続における「事実」と「遮断効」の範囲(1)―身体拘束にかかる諸原則の射程―
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22K01203
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小島 淳 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (80318716)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 刑事訴訟法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度においては、「逮捕勾留の一回性の原則の射程」、また、2022年度からの積み残しとなっていた「令状審査の対象となる事実の範囲」、「逮捕前置主義における『被疑事実の同一性』」、さらには、2024年度に主として検討することになっている「併合罪関係に立つ事実の間での逮捕前置主義、逮捕・勾留の一回性の原則の適用」についての研究(主として論文執筆に向けた下準備としての文献調査等)に従事した。 また、関連するテーマ(「身体拘束」の遮断効ではないが、本研究の究極的な目的を達成するために検討が必要となる「裁判」の遮断効たる「二重の危険」に関するテーマや、審判の対象たる「事実」の「範囲」に関するテーマ)についての研究を進め、以下の形で成果を発表した。 まず、二重の危険に関する米国の最高裁判例であるSmith v. United States, 143 S. Ct. 1594(2023)の紹介を執筆した(2024年度中に比較法学58巻に掲載予定)。なお、2022年度に執筆したDenezpi v. United States, 142 S. Ct. 1838 (2022)の紹介は、2023年6月刊行の比較法学57巻1号162頁に掲載された。 また、2024年3月に刊行された判例解説「訴因変更の要否」刑事訴訟法判例百選(別冊ジュリスト267号)104-105頁では、いかなる事実についての、どの程度のズレが生じる場合に訴因変更の手続が必要になるかという点についての画期的な判断を提示した最三小決平成13年4月11日を分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2022年度においては「令状審査の対象となる事実の範囲」及び「逮捕前置主義における『被疑事実の同一性』」について、また、2023年度においては「逮捕勾留の一回性の原則の射程」について検討し、各年度末において関連する論考を公表する予定となっていた。2023年度までの研究において、これらの論文の執筆のための資料の収集等の下準備は一定程度進めることができたものの、2024年5月現在でこれらのテーマを直接主題とした論文を発表することができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のとおり、2022年度・2023年度中に論考を発表する計画になっていたテーマについては、2023年度までに、執筆に向けた下準備を一定程度進めることができている。そこで、もともと2024年度において検討する計画となっていた「併合罪関係に立つ事実の間での逮捕前置主義、逮捕・勾留の一回性の原則の適用」というテーマと併せてさらに研究を進め、「令状審査の対象となる事実の範囲」や「逮捕前置主義における『被疑事実の同一性』」に関する研究の成果については、2024年度中に論文の形で発表することを目指す。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由の中心は、関連する図書(主として洋書)の発注にかかる出費が想定を下回ったことである。 2024年度に関しては、対面参加の形で開催される学会や研究会への参加、図書・備品(プリンターのトナーを含む)等にかかる出費が増えることが想定されるため、次年度使用額と翌年度分として請求した助成金をそれにあてることを計画している。
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