2023 Fiscal Year Research-status Report
捜査開始要件としての嫌疑と事前配慮型捜査の適正に関する研究
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22K01210
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
内藤 大海 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(法), 教授 (00451394)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 嫌疑 / 監視型捜査 / 将来の嫌疑 / 人工知能 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度もドイツを比較対象とした文献調査を実施した。前年度までに、ドイツにおいて捜査開始のためには初期段階の嫌疑が必要であること、実施する捜査の内容により求められる嫌疑レベルが段階的に考えられていることを確認した。また、わが国とは異なり、捜査手法の大部分が強制処分として理解され、法律の留保原則の下で個別の授権根拠を要求されているところ、強制処分に該当するものの中にも基本権介入レベルが低いものから高いものまで多種にわたる。この点、ドイツ刑訴法は、当該処分の基本権介入レベルに応じた嫌疑レベルを要求していることが確認された。他方、わが国においては多くの捜査手法が任意処分として理解され、捜査に関する一般規定である刑訴法197条1項を授権根拠として実施されている。しかしながら、任意処分の多くが何らかの権利・利益を侵害する(おそれがある)ものであることはわが国においても認められており、一般規定による幅広い授権という状況は、わが国においても継受されている法律の留保原則との関係で問題がある。この点、上記調査結果を参考に、わが国における任意処分についても権利制約の内容に応じた要件設定は可能であるという分析結果を得た。 なお、日独ともに以前から監視型捜査のあり方が議論の対象となっているところ、近年はこれに加えて人工知能を用いた行動予測による影響が議論の対象となってきている。現在はビッグデータとAIによる解析の結果による将来の犯罪に対する対応が、従来の嫌疑概念を根拠とする捜査手法の投入という考え方と整合するのかについて文献調査を進めている。加えて、将来の行為の訴追のための捜査手法としては、刑訴法改正によるおとり捜査に関する規定の新設が予定されており、この点についても合わせて調査検討を行っている。 年度中、上記の問題意識についてドイツの研究者とも情報および意見交換を行い、共同研究を行う意思確認をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナで前回の課題が遅れて2度の延長をしていたため。
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Strategy for Future Research Activity |
進み始めたので、このまま進めていく。
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Causes of Carryover |
前回の課題の予算が残っていたこと、1年目にあまり予算を執行できなかったことなどの理由からそうなってしまったが、昨年度から本課題研究にも本格的に取り組めるようになってきたため、今後は問題ないと考えている。
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