2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K01218
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
金子 博 近畿大学, 法学部, 准教授 (90633826)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 共同正犯 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、過失犯の共同正犯に関する研究成果を踏まえつつ、①裁判例を踏まえた故意作為犯の共同正犯の分析・検討と②共犯の一形態である従犯における「犯罪結果の幇助行為への帰属」の分析・検討の2つのアプローチから共同正犯の判断枠組みを構築することを目的とするものである。 本年度は、計画通り、①故意作為犯の共同正犯の分析・検討に着手することから開始した。もっとも、裁判例を手がかりとして故意犯の共同正犯を検討し、「意思連絡」や「犯罪結果への物理的・心理的な促進による共同正犯(共同性)の理論構成の限界を示すことを予定していたが、まずは共同正犯と関係する同時傷害の特例(刑法207条)の研究を先行させ、近年の最高裁判例(最決令和2年9月30日刑集74巻6号669頁。以下、令和2年決定と表記。)を契機として問題点を明らかにした。 すなわち、刑法207条は、立法当初、外形上共同実行に等しい状況下において、共同正犯の根拠とされる意思連絡が認められない場合(同時犯)につき、共同正犯として扱う例外的規定と位置付けられていたところ、令和2年決定は、(承継的)共同正犯を事実上否定した事例(最決平成24年11月6日刑集66巻11号1281頁)と客観的に類似した状況下においても、外形上共同実行に等しい状況(=同一の機会)を認める判断を示すに至ったため、共同正犯固有の形態が裁判実務上等閑視されることに鑑み、共同正犯の判断枠組みにも影響を与えうるものであることを明らかにした。 このような刑法207条の理論的分析は共同正犯の判断枠組みに資するものであるため、今後、この点を踏まえつつ、故意作為犯の共同正犯を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍の影響による授業方針の変更等に伴い時間を割かれることもあったが、他方で、当初、故意作為犯の共同正犯それ自体を検討するなかで、同時傷害の特例(刑法207条)と共同正犯(共同責任)の関係性に着目するに至り、その研究を先行させ、その検討にはやや時間を要する結果となったこともあり、「やや遅れている」とした。現在、刑法207条の研究にとどまらず、故意作為犯の共同正犯に関する文献の収集も進めており、次年度は、故意作為犯の共同正犯の研究を中心に進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度も、昨年度と同様、研究会へ参加しつつ、共同正犯に関する文献研究を中心に進めていく予定である。その際、一見すれば共同正犯とはあまり関連しそうにない同時傷害の特例(刑法207条)のような共同正犯の周辺領域にも目を向けながら、できる限り多面的な視点から検討を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により旅費の支出は生じなかったため、文献収集等に関する物品費支出を増大させることとしたが、残額が発生した。次年度では、当該残額を含め、主として、文献収集に関する物品費にあてるとともに、学会・研究会へ参加する旅費にもあてることを予定している。
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Research Products
(1 results)