2023 Fiscal Year Research-status Report
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22K01232
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
神野 礼斉 広島大学, 人間社会科学研究科(法), 教授 (80330950)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 成年後見 / 任意後見 / 意思決定支援 / 地域連携ネットワーク / 世話法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、任意後見の利用促進、成年後見人による決定支援に関する論考を発表した。 「任意後見監督の意義とあり方」(実践成年後見106号)は、日本の任意後見制度立法時の議論、その後の運用状況、ドイツの任意後見制度である「事前配慮代理権」などを通じて、任意後見制度の今後を展望するものである。日本の任意後見制度は、監督人の選任を条件とし、任意後見人による濫用リスクに対して一定のコントロールを及ぼそうとするものである。もっとも、移行型の任意後見においては、契約発効の必要があるにもかかわらず、委任契約のまま進行している事案も少なくない。ドイツでは、事前配慮代理権を付与することに伴うリスクについては、世話協会、世話官庁による情報提供や助言において注意喚起がなされる。日本でも、成年後見制度利用促進法に基づいて、地域連携ネットワークが構築されつつある。まずは利用者に任意後見制度の意義を理解してもらい、利用者における「任意後見受任者による不正に対する不安」を払拭することが重要であろう。 「親としての配慮・補佐・後見(11)――ドイツ家族法注解――ドイツ民法1821条」(民商法雑誌159巻6号)は、ドイツの世話人(成年後見人)の行為基準を定めたドイツ民法1821条を紹介するものである。ドイツ世話法は2021年に大きな改正を受けた。これまでの世話法の規定は、被世話人の意思や好みではなく、被世話人の客観的な利益(福祉)に基づく決定に従う危険があった。しかし、法定代理人の行為規範は被世話人の客観的利益に従うという「最善の利益」を志向する法制度は、障害者権利条約の趣旨とは合致しないものとなった。新法は、被世話人が自由な意思を形成できない場合でも、客観的な福祉によるのではなく、被世話人の希望やそれに代わる被世話人の推定的意思が考慮されなければならない。日本の成年後見制度にとっても不可欠の視点といえよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していた補助・保佐の利用促進に関する検討が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に沿って、補助・保佐の利用促進、不正防止の徹底などについて引き続き検討を続けたい。
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