2022 Fiscal Year Research-status Report
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22K01246
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伊藤 隼 北海道大学, 大学院法学研究科, 准教授 (10756589)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 民事訴訟法 / 事実的効力 / 波及効 / 証明効 / 先例効 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、後訴裁判所の判断に対する影響力としての「証明効」と当事者その他の関係者の行動に対する影響力としての「波及効」という先人の分類を大まかな道標としつつ、わが国(の判決手続)において「判決の事実的効力」が問題になり得る場合を網羅的に探索するとともに、それが第三者に影響を及ぼす局面に特に焦点を当てて、そこで要請され得る訴訟法上の規律のヴァリエーションについて確認することに注力した。こうした作業を通じて、判決の事実的効力をめぐる議論状況の全体像の把握に努めたが、これは次年度以降の本格的な検討のための下地となるものである。 国内の議論の咀嚼と並行して、ドイツ法の調査・研究にも乗り出している。とりわけ、わが国において証明効を理論として承認し得るか否かについて見解の対立が顕著である点に鑑みて、これに関する議論をいまいちど見直して、その含意を精査するとともに、証明効の存在を前提とした条文であるといわれる日本民訴法338条1項8号の元となったドイツ民訴法543条6号(現580条6号)――問題の判決が基礎にしている他の判決が確定判決によって取り消されたときに原状回復の訴えを提起できるとする――をめぐる議論状況を起草過程・改正過程に遡りつつ跡づけた。刑事判決の民事判決に対する拘束力をめぐる理解の変化に伴い、同号が想定するシチュエーションに興味深い変遷が見られること等が明らかになったが、その成果については、次年度以降にブラッシュアップを図ったうえで、早期の公表を目指すこととしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定どおり、日本法における議論状況をひととおり確認・整理したうえで、ドイツ法の研究にも一定程度着手することができたため、おおむね順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、外国法の議論を丁寧に参照しつつ、判決の事実的効力と位置づけ得る効力を広く射程に収めて、それに対する訴訟法上の規律の在り方について考察を進める。なお、当初の計画では差し当たり国内を拠点とする前提であったが、コロナ禍による行動制限も緩和されたため、次年度中よりドイツに拠点を移して集中的な研究に取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
前課題の遂行の際に収集した資料が本課題の遂行に役立ったほか、在外研究の予定が年度中に具体化したこともあり、ひとまず日本法の議論状況の確認により傾注したため、残額が生じるところとなった。これについては、必要な洋書の購入に充てるほか、在外研究のための旅費として支出したい。
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