2022 Fiscal Year Research-status Report
民法における人格権法の定位--不法行為法理論と契約法理論の再考に向けた視座構築
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22K01251
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
石尾 智久 金沢大学, 法学系, 講師 (50849239)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 人格権 / 契約法 / 不法行為法 / 情報法 / デジタル社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、フランスを比較対象として、契約法及び不法行為法において、人格の尊重という視座の持つ意味を明らかにすることである。本年度は、申請書の研究計画に記載した通り、人格権に関するフランスの文献を分析した。フランスでは、民法学において人格権論が注目を集めたのは20世紀初頭だが、著作者人格権に関する議論が先行していることに着目して研究を進めたことによって、フランス法における人格権概念の位置づけについて全体的な見通しを得ることができた。さらに、フランス法における人格権論は、データに関する法規制や、デジタル社会への法的対応といった現代的問題への広がりがある。そこで、本研究は、名誉権、プライバシー権、氏名権、肖像権といった、民法学が伝統的に考察対象としてきた人格権だけではなく、その延長線として、データの保護や利用に関する法規制にも視野を広げるに至った。この成果の一つとして、研究会において、健康データの法規制に関する報告をした。 さらに、日本の契約法および不法行為法に関する基礎調査も進めることができた。特に不法行為法については、2022年度私法学会シンポジウムにおいて、「高齢者と不法行為――自律的主体としての高齢者と保護を要請する主体としての高齢者」というタイトルで報告をした。これを契機として、日本における不法行為法の学説および判例を網羅的に検討し、不法行為法における人格の位置づけに関する基礎調査を進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記載した通り、本年度は、フランスにおける人格権論の分析を予定しており、その通りの研究を進めることができた。さらに、当初の予定に加えて、データの保護や利用を支える法制度に研究を広げるための基礎作業も進めることができた。予定通りの基礎調査を進めたことに加えて、本研究の延長線に位置付けられる課題の見通しも得たことから、上記の通り評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、フランス法における基礎文献の分析を進めつつ、具体的な問題に関しても検討をする。そのうえで、人格権に関する考察だけではなく、データに関する法規制についての研究も継続し、成果の公表に向けて尽力する。
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Causes of Carryover |
国内研究会に参加することを前提として旅費を計上していたが、その多くがオンライン開催となった。その結果、旅費の支出が想定よりも少なかった。本研究の広がりに応じて基礎文献をさらに収集する必要があるため、本年度の残額は次年度の文献収集費用に充てる予定である。
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