2023 Fiscal Year Research-status Report
The Development and Practical Operation of Company Law at Pearl River Delta Region
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22K01261
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
井上 貴也 東洋大学, 法学部, 教授 (20297724)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 武秀 東洋大学, 法学部, 教授 (90186891)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 会社法 / 企業統治 / 取締役会 / アジア法 / 法継受 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、2023年度は、中国における共同企業形態の起源の一つとして挙げられる合股について分析を加えることとした。研究対象の地域に固有の会社慣習は、必ずしも会社法の規定に従って運営されているわけではなく、そ典型例として合股があげられる。合股とは、家族または知人たちが一定の割合で出資し、特定の屋号を有して商業を営む制度であり、出資者が営業の実務に関与するとは限らない点で、株式会社に類似した外観を有するが、法人格を有せず、出資者間の連帯責任も存在しないという慣習で運営されていることが特徴である。 つぎに、香港を対象地域とした課題として企業統治に頂点を当て、英国法との結節点という観点から取締役秘書の問題を考究した。会社秘書制度のハンドブックは多数刊行されており、これらに分析を進めている。これに関連して、英米法の関連の翻訳作業を通して英国法の理解を深めたところである。 さらに、華南地域の慣習法についての調査においては、伝統的な律令と異なる部分がありそれがこの地域の特殊性を形成する大きな要因となっていることの理解を深めた。 また、中国会社法については、2024年に改正が予定されていたので、中国企業のグローバル展開をにらみ、従来の国内型企業から国際企業へと脱皮をめざし、同時に小規模な企業もまた海外展開を目指している。このような変化対応するにはこれまでの会社法制では必ずしも十分ではないとの趣旨により会社法改正が行なわれた。会社法制の刷新が試みについて考察を加えた。わが国では株式については全額払込制であるところ、資本制度の改正の相違について考察を加えた。中国会社法における董事の義務の範囲や責任、利益相反取引等について考察し、中国会社法のグローバル化について検討を加えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
香港会社法の改正論点の分析については、2022年コロナ禍の影響で調査が出来なかったが、2023年現地調査を行なうことが出来た。研究分担者は、中国会社法と日本会社法上の制度の比較という観点から、招聘を受け、遼寧大学日本研究所において研究成果の一部を報告した。 2023年度、慣習法の中にある商事に関する慣習の研究を進めた。華南地域の一部である香港を中心として調査を行った。とくに、小規模会社の慣習について調査を進め、いくつかの企業について聞き取り調査を行ったところである。 2024年中国会社法改正についてのシンポジウムに参加するなどし、最新の改正動向を獲得できた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である2024年度は、香港、マカオの会社法が中国会社法とどのように接近しようとしているかについて、法典上の類似性を確認する。研究成果の集約作業を進める。香港およびマカオにおけるいわゆる上場企業および小規模会社の分析を通して、共通性を深く掘り下げる。今回の研究では研究分担者とともに、多数存在する合股の問題点を裁判例の分析作業の中で明らかする。 今日の香港、マカオの経済界においても大きな勢力である小規模会社と会社法の関係を判例の中で確認する作業を行い、慣習と制定法の関係を解明する。中国における国有企業の民営化により大企業が存在するが、大企業の社会的問題についても法的側面から触れることにする。
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