2022 Fiscal Year Research-status Report
The Intersection between Countermeasure against Offenders and Victim Support in DV Cases- the Emerging Role of the Judiciary
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22K01295
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Research Institution | Kansai University of Welfare Sciences |
Principal Investigator |
松村 歌子 関西福祉科学大学, 健康福祉学部, 教授 (60434875)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 匡子 神奈川大学, 法学部, 教授 (10222291)
宮園 久栄 東洋学園大学, 人間科学部, 教授 (40348446)
清末 愛砂 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 教授 (00432427)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ドメスティック・バイオレンス / 被害者支援 / 加害者プログラム / 裁判所 / DVコート |
Outline of Annual Research Achievements |
日本のDV施策は、加害者の責任を保護命令違反のときに問うのみで不十分である。応報的アプローチだけで、加害者に対して具体的な働きかけをしないままでは、暴力や支配的な行動パターンは継続するであろうし、被害者に対する執着心や支配意識が非常に強い場合には、重大事件に発展する恐れもある。また、離婚や離別によって、被害者との切り離しが成功したとしても、別の新たな被害者が生み出されるだけかもしれない。刑罰の適正な対応だけでは、再被害を防ぐことはできない。加害者の危険度や緊急度、被害者の置かれた状況を適切にアセスメントし、事件全体を適切にマネジメントしていく必要があり、本人が抱える問題解決に向けた回復支援アプローチが求められている。 また、保護命令は地裁が発令するが、離婚や子どもの養育費、面会交流などの取り決めは家裁が別個に判断を行う。DV事件では、過去への制裁という刑事事件的対応よりも、後見的・継続的に関わる家裁的な対応が期待され、司法に求められる役割が変わってきている。 本研究では、アメリカ、韓国、シンガポールでの法実践を参考に、DV事件における司法の役割を検討してきた。家裁がDV事件を扱うことについては、韓国の家庭法院の実践が大変参考になる 。韓国の家庭法院は日本の家裁調査官制度を参考にしており、現在では、離婚時の親教育の提供、DV事件を家庭裁判所で取扱い、プログラムの受講命令や履行の監視を行っている。日本において、家裁に保護命令の発令やDV事件を移管するためにはDV防止法の改正が必須となるが、まずは、DVが個人的な問題ではなく、社会構造に起因する問題であるということを社会が認識し、暴力が許されない問題だという認識を深めていくことが重要であろう 。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度もコロナ禍による移動制限が残り、海外への渡航は限定的であったため、予定していたカナダへの海外調査はできなかったが、韓国調査が実現できた。また、日本女性学会、亜細亜女性法学会、司法福祉学会において報告の機会が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、国内外の加害者プログラム実施団体や被害者支援団体への聞き取り調査や、関連する学会やシンポジウム・研究会に参加・報告し、情報収集及び関連する研究者や支援者との交流を深め、意見交換を行う等をして研究を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
2022年度は、コロナ禍による行動制限の影響が続き、思うように海外調査の予定を組むことができなかった。2023年度は、国内外の調査予定を積極的に組んでいき、研究活動を進めていきたい。
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