2022 Fiscal Year Research-status Report
ドイツのグリーン・リカバリーと日本の気候保護政策の比較事例研究
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22K01313
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
坪郷 實 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 名誉教授 (20118061)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | グリーン・リカバリー / コロナ・パンデミック / 気候保護政策 / 重層的環境ガバナンス / 地域分散・連携型政治行政システム |
Outline of Annual Research Achievements |
ドイツのグリーン・リカバリーについては、2021年発足のショルツ信号連立政権の気候保護政策の動向を調査した。2030年の電力の再生可能エネルギーの占める比率の目標は少なくとも80%であり、2022年の時点で46.2%である。ウクライナ戦争によるエネルギー危機の影響を受けたが、2023年4月半ばに、すべての原発は停止し、脱原発を実現した。さらに、2030年の脱石炭火力を目標にする。 日本の気候保護政策については、第六次エネルギー基本計画、グリーントランスフォーメーション(GX)などの動向について調査をした。再生可能エネルギーの主力電源化がうたわれ、2030年電力の再生可能エネルギーの比率は36~38%が目標である。他方、原子力の活用(次世代革新炉への建て替え、運転期間の延長)の方針であるが、見通しは明確ではない。脱石炭火力の時期は決まっていない。 自治体レベルの動きとして、無作為抽出で選出される市民による熟議を行い、具体的な気候保護政策を提案する気候市民会議の開催が、札幌市、川崎市から、武蔵野市などに拡がっていることは、特筆される。 地域分散・連携型政治行政システムの事例研究に関して、市民電力連絡会のセミナーや総会などに参加し、市民電力である生活クラブエナジー、生活クラブ連合会にヒアリングを行った。市民電力は、現在、自家消費型を重視し、今後、地域づくりの中に市民電力を位置づけることを目標にしている。生活クラブ連合会は、ローカルSDGsの取り組みとして、山形県庄内地域をはじめとして、食・エネルギー・ケア+ワーク自給ネットワーク構想に取り組んでおり、重要な事例である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、ドイツのグリー・リカバリーと日本の気候保護政策の最新の動向について、ドイツ連邦政府、日本政府及び自治体の動向に焦点を当てて文献調査を行い、今後の事例研究のための準備作業を行うことができた。 地域分散・連携型政治行政システムについての事例研究に関して、日本については、市民電力、自治体電力(地域電力)の新しい動向を把握した。市民電力連絡会の『市民発電所台帳2022~自家消費型発電所をもっとふやそう~』とそのセミナーは重要な情報提供を行っており、現在の市民電力の課題と今後の方向性を把握することができた。さらに、地域の新しい動向を把握するために、山形県庄内地域などで、食・エネルギー・ケア+ワーク自給ネットワークに取り組む生活クラブ連合会にヒアリング調査を行い、現地調査の準備を行うことができた。 調査研究を実施するために、研究協力者との研究会を設置した。今後、この研究会で事例研究、現地調査の準備を行う。 このように、比較事例研究に向けた調査研究とその準備作業が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、日本における地域での事例研究を重点的に行い、山形県庄内地域などで、ヒアリング調査を行う予定である。研究協力者との研究会において、現地調査の準備、実施、分析を行い、報告書の作成を行う。研究会では、テーマに関係する研究者のヒアリングも行う予定である。 2000年分権改革以降の自治体の政治行政の実態に関しては、東京都多摩地域の自治体職員(前職員も含む)のヒアリングを実施する予定である。 ドイツにおける現地調査については、2023年度に準備を行い、2024年度に実施する予定である。ドイツにおける現地調査では、ベルリン自由大学のマイク・シュプロッテ博士の協力が得られる。シュプロッテ博士との打ち合わせを定期的にZoomにより行う。
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Causes of Carryover |
2022年度は、コロナパンデミックの影響もあり、ヒアリングを限定的に実施したため、次年度使用額が生じた。2023年度は、集中して、専門家、自治体職員、市民活動のメンバーにヒアリングを行い、現地調査を研究協力者と共に、複数個所で実施する予定である。次年度使用額は、2023年度分と合わせて、専門的知識の供与、調査旅費、報告謝礼・原稿料、資料整理人件費などに充当する。
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