2023 Fiscal Year Research-status Report
ドイツのグリーン・リカバリーと日本の気候保護政策の比較事例研究
Project/Area Number |
22K01313
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
坪郷 實 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 名誉教授 (20118061)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | グリーン・リカバリー / 気候保護政策 / 地域分散・連携型政治行政システム / 重層的環境ガバナンス / コロナ・パンデミック |
Outline of Annual Research Achievements |
ドイツのグリーン・リカバリーと気候保護政策については、ドイツにおける脱原発とエネルギー転換の現局面について分析を行った。ショルツ信号連立政権は、連邦気候保護法の改正案を提出し、新たな気候保護プログラムを閣議決定している。ドイツのエネルギー転換は、産業、建物、交通、農業などの部門に再生可能エネルギーを拡充する部門間統合を進める新段階にある。 日本における気候保護政策に関連して、2023年度は、地域分散・連携型政治行政システムの事例研究に重点的に取り組んだ。山形県庄内地域のTOCHiTO事業、秋田県にかほ市の生活クラブ風車夢風と地域間連携事業について、ヒアリング調査を実施した。 TOCHiTO(とちと)事業は、酒田市の「生涯活躍のまち構想」に基づき、首都圏を中心とする生活クラブ生協(庄内、酒田の生産者と産地交流を行っている)と連携し、「公民連携の仕組み」を提示し公募を行った事業である。酒田市内で活動する事業者グループ(仮設機材工業株式会社、NPOパートナーシップオフィス、合同会社とびしま)が事業者として選定され、移住者向け住宅と地域交流拠点を整備運営している事業である。首都圏から移住者を受け入れ、「参加する暮らしに集うまち」をコンセプトにしている。2023年度に居住棟はほぼ満室で発足している。 地域間連携のために設置された庄内自然エネルギー発電基金は、庄内・遊佐太陽光発電所の収益の一部を積み立て、酒田市や遊佐町での活動を助成する取り組みである。にかほ市の生活クラブ風車は、地域の生産者や自治会などと地域間交流を行いながら進めており、生活クラブの協力金によりにかほまちづくり基金が運用されている。 これらの事例は、地域分散・連携型政治行政システムの構築のために多くの重要な論点を含んでいる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドイツのグリーン・リカバリー及び気候保護政策と、日本の気候保護政策の最新の動向について、ドイツ連邦政府や自治体、日本の自治体の動向に焦点を当てて、調査を行った。ドイツの気候保護政策の現段階とすべての原発廃止を完了したことについてはレポートをまとめた。日本の自治体の動向については、取り組みが広がっている気候市民会議に関する事例について、資料を収集した。 地域分散・連携型政治行政システムの事例研究として、山形県庄内地域(酒田市、遊佐町)と、秋田県にかほ市で、現地調査を実施できた。 市民電力、自治体電力・地域電力の新しい動向については、市民電力連絡会編集の『市民発電所台帳2023』などがあり、このような実態調査の分析を行った。 事例研究の実施と分析のため、研究協力者(小林幸治、伊藤久雄、三浦一浩)と研究会を開催し、事例についての報告書の作成の準備を行った。 このように 比較事例研究のために現地調査を実施し、研究会を開催して報告書の作成に向けた準備作業も行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
ドイツのグリーン・リカバリーと気候保護政策については、ショルツ信号連立政権の連邦気候保護法改正、再生可能エネルギーのさらなる拡充、自治体レベルにおける気候保護政策の新動向など、エネルギー転換の新たな段階について調査・分析を行う。 日本の気候保護政策については、特に自治体レベルの新動向を分析する。自治体レベルで実施されている気候市民会議の事例について、ヒアリング調査を行う。また、2023年12月に出された第33次地方制度調査会答申を受けて2024年3月に国会に提出され、審議中である地方自治法改正案など、国と自治体の対等・協力関係に関係する新たな動きがある。そのため、このような動きが、地域分散・連携型政治行政システムの構築にどのような影響を及ぼすのかについて、専門家へのヒアリングを含めて調査・分析を行う。 事例研究に関して、庄内地域におけるTOCHiTO(とちと)事業の事例、生活クラブ風車夢風を含む生活クラブエネルギー事業連合による再生可能エネルギーの促進と地域間連携の事例、自治体による気候市民会議の取り組みの事例などについて、研究協力者と研究会を開催して、分析の上、報告書を作成する。最後に、日本とドイツの比較の視点から、ドイツのグリーン・リカバリーと気候保護政策の新たな段階と日本における気候保護政策の現状と課題を分析し、提言も含めた報告書を作成する。
|
Causes of Carryover |
2022年度、2023年度は、コロナ・パンデミックの影響もあり、ヒアリング調査を限定したので、次年度使用額が生じた。2023年度に引き続き、2024年度も専門家、市民活動団体のメンバー、自治体職員に対するヒアリング調査を集中的に行う予定である。2024年度も、現地調査を研究協力者と共に、複数個所で実施する。研究協力者と定例研究会を開催し、各事例について報告・分析を行い、報告書を執筆する。次年度使用額は、専門的知識の供与の謝礼、調査旅費、報告謝礼・原稿料、資料整理人件費などに充当する。
|