2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22K01424
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
羽森 茂之 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (60189628)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | Spillover Effects / ESG Investment / Green Finance |
Outline of Annual Research Achievements |
2008-2009年の世界金融危機等の経験を経て、個々の金融機関の健全性の確保に止まらず、金融システム全体を不安定化させるシステミック・リスクの抑制を目的とした金融機関のリスク管理強化や政策当局のマクロプルーデンシャル規制導入が世界的な課題となっている。他方で、近年、ESG投資やグリーンファイナンスなど、経済社会の持続可能性の向上に貢献する投資への社会的な関心が高まっている。本研究プロジェクトはこれらの課題解決に資する学術的知見を創出しようとするものである。 2022年度の主要な研究実績としては、2冊の英文研究書と8篇の英文学術論文の出版及び国際学会での1件の報告である。特に、8篇の論文の中で6篇はSSCI又はSCIE掲載誌から採択されたものであり、国際的に高い評価を得ることができた。 研究実績の具体的な内容に関する例は以下の通り。(1) ESG、再生可能エネルギー、グリーンボンド、サステナビリティ、炭素排出権先物の株価指数間の動学的なスピルオーバー効果を分析し、炭素排出権先物はボラティリティの伝達者でありグリーンボンドはボラティリティの受信者であることが明らかとなった。(2) BRICS諸国の地政学的リスクと米国のマクロ経済の間のスピルオーバー効果について分析を行い、COVID-19危機の期間中のスピルオーバー効果は2007-2008年の世界金融危機の時よりも大きいことが明らかとなった。(3) 中国の「Three-Year Action Plan to Win the Blue Sky War」の効果について分析を行い、中国の「Blue Sky Plan」が鉄鋼企業のESG投資の促進に大きな役割を果たし、排気ガス中の二酸化硫黄と窒素酸化物の排出量が大幅に削減されたことが明らかとなった。(4) 気候変動が条件となる世界のソブリン・クレジット・デフォルト・スワップ市場のテール依存性を分析し、異常気象や気候災害が国別のソブリンリスクに大きく影響することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロジェクトの初年度にもかかわらず、実りの多い研究活動を行うことができた。その結果、(1) Prof. Xiao-Guang Yue (European University Cyprus), Prof. Lu Yang (Shenzhen University), 及び Prof. James Crabbe (Wolfson College, Oxford University) との国際共同研究として、Frontiers in Environmental ScienceにおいてSpecial Topic 「ESG investment and its societal impacts」の編集を行い、世界中から28篇の研究論文を掲載した;(2) 2冊の英文研究書と8篇の英文学術論文を出版した。特に、8篇の論文の中で6篇はSSCI又はSCIE掲載誌から採択されたものであり、国際的に高い評価を得ることができた。これらは、本研究プロジェクトの研究内容が内外から一定の評価を得ていることを示している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の研究をさらに推進し、該当する研究分野に関して国際共同研究を進めながら、英文学術専門誌の投稿を基本に研究を進めていく予定である。特に、①金融危機のメカニズム解明、②精度の高い早期警戒システムの構築、③金融危機の実体経済への波及経路の分析、④ESG投資・グリーンファイナンスなどの特徴の解明、等に重点を置く予定である。
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Causes of Carryover |
コロナの状況が依然として落ち着かず出張に行くことがはばかられたため、次年度への繰越金が発生した。本年度は、コロナの状況が落ち着きを見せていることもあり、出張旅費等を有効に利用して予算を適切に消化する予定である。
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