2022 Fiscal Year Research-status Report
産業間取引を考慮した一般均衡モデルによる分権的政策競争の定量的分析
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22K01452
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伊藤 亮 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (30516000)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米本 清 高崎経済大学, 地域政策学部, 准教授 (10462631)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 産業連関 / 一般均衡 / 海運政策 / 災害リスク |
Outline of Annual Research Achievements |
伊藤・米本は共同で交通インフラ整備の波及効果と便益を産業連関表によって簡易推計する手法の開発を行なった。従来の産業連関分析では総生産の変化が主な分析対象であったが、本研究では非線形の一般均衡交易モデルを線形近似することにより、一般均衡分析と整合性のあるレオンチェフモデルの拡張を行うことを試みた。得られた誘導形はミクロ基礎づけを持ちながら、パラメータ推計は不要でレオンチェフ逆行列と同等の扱いやすさを持つ。また、線形近似による誤差の程度は、現実的に十分大規模なインフラ整備を考慮しても全効果の数%にとどまるため、実務的な応用性は高いと考えられる。これらの成果は査読付き国際雑誌である、Economic System Research誌に投稿し掲載されている。 また本年度はこの研究をさらに拡張し、東アジア産業連関表を用いた海運政策の効果分析に応用するための準備を行なった。主に米本がデータ収集をと整備を行う一方で、伊藤はその理論的基礎として、海運産業における防災インフラ整備モデルの理論的研究を進めた。この研究では、災害リスクに直面する二港湾の開発者がそれぞれ防災インフラ整備投資を行う時、災害の独立性のもとでインフラの相互的リスク回避機能が増加することで、分権的防災投資が課題になりやすいという結果を導いた。また、港湾間の距離が長い場合には、リスクの相互回避が困難になるため各港湾でより多くの防災投資が必要になるにも関わらず、港湾間の競争が緩和される結果、防災投資がかえって減少することで社会的非効率性が増大することが明らかにされた。これらの結果の一部は国際学会で報告済みである
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基本モデルは既に完成し、査読付き国際ジャーナルに掲載済みである、また海運におけるインフラ整備効果の基本的な理論分析と、東アジアを中心とした産業連関表の収集と整理も進んでおり、これらの部分的な成果を基本モデルをベースとして統合することで、大幅な研究の進捗があると見込まれる
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は伊藤。米本共に個別の研究を行い、それぞれが十分な成果と進捗を得ることができた。そこで次年度はそれらの成果を基本モデルの枠組みで統合し、大幅なブレークスルーが得られると期待される。具体的には、簡易なモデルに基づく海運政策の理論研究結果を、既に完成済みの一般均衡型産業連関モデルに落とし込み、そこに新たな産業連関表のデータを適用することで、政府の意思決定を内製化したより政策的な分析を行うことが可能になると考えられる。
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Causes of Carryover |
コロナ化の影響により、当初予定していた学会出張を断念した。ただし、一部の学会にはオンラインで参加して報告しているため、研究に多くの支障は出ていない。次年度以降は状況が改善するため、予定した出張を後ろ倒しする形で実施し、最終的には計画通りに研究を遂行できる
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