2022 Fiscal Year Research-status Report
地域経済の産業構造を把握するための産業部門間の連関性指標の検討
Project/Area Number |
22K01458
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
高瀬 浩二 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (20350358)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 連関性指標 / 産業連関 / EBPM / 地域経済 / 産業構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
地域経済におけるEBPM(evidence based policy making; エビデンス(証拠)に基づく政策立案)の重要性が増す中,政策立案や投資計画のために,地域経済の主要産業部門を定量的に把握することが求められている。そのためには,地域産業連関モデルから得られる産業部門間の連関性指標を用いることが有効である。連関性指標には様々なものがあり,それぞれ,求められる計算負荷や経済学的な解釈が異なる。また,根拠とする連関性指標の選択によって,地域経済におけるある産業の特徴や役割に関する判定結果が異なる場合がある。このことは,定量的な評価基準を根拠とするEBPM促進の障害になりうる。本研究は,連関性指標の選択に起因する判定の差異の要因を実証的および解析的に検討することを主たる目的とする。その過程で,国内外の産業連関表の収集とそれらを用いた様々な連関性指標の計測を行い,その知見を蓄積する。同時に,自治体関係者にとって計算負荷の高い連関性指標の計算ツールを開発する。 この目的のため,当該年度に行った研究実績は以下のとおりである。(1)数値計算ソフトウェアの実装と地域産業連関分析の基本モデルの運用,(2)計算負荷の軽減を目途とした国際的な研究動向の概観,(3)様々な連関性指標の計測および理論的検討,(4)地域産業連関表の収集・整備,(5)地域産業連関表の作成主体である行政への聞き取り調査,(6)コロナ禍における地域経済への影響の計測。これらの活動を通して,本研究課題の研究対象に対する行政のニーズを把握し,学会内での関連研究に関する情報収集を行った。同時に,先駆的な取り組みを行っている市町村の行政担当者との情報交換を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分析モデルの概念整理および基礎データの収集と整理について,おおむね順調に進展している。また,国際的な研究動向を概観し,様々な連関性指標の概念整理を行った。さらに,行政および学会での広報活動を通し,研究課題の位置づけおよび有用性について検討を進めた。理論的な分析にとどまらず,地域経済の実証的分析を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
分析モデルの概念整理および基礎データの収集と整理を継続して行う。並行して,国際的な研究動向の概観を行い,日本の地域産業連関表を用いて様々な連関性指標の実証的な検証を行う。2015年版の都道府県産業連関表は,本報告書執筆時点で46都道府県から公表されており,それらの統計資料の整理を進める。また,各自治体の作表担当者への聞き取り調査を進め,行政側から見た地域産業連関表作成および利活用の課題を整理する。同時に,地域産業連関表の地域経済政策への応用例の収集と検討を行う。本研究課題の研究対象である地域経済の産業部門間の連関性指標を地域の経済政策に生かすべく,地域経済の実証分析を進める。
|
Causes of Carryover |
(理由) 2022年度中に予定していた聞き取り調査が,旅費のかからない形式(主にインターネットを用いたもの)であったことが,次年度使用額が生じた主な理由である。 (使用計画) 2023年度末までに全都道府県の2015年産業連関表が作成・公表される見込みであるため,2023年度中に集中的に聞き取り調査のための出張および最新データの収集と整理を行う。また,聞き取り調査の対象を都道府県に限定せず,産業連関表を作成している全国の市町村にも広げることを計画している。それらのために次年度使用額を利用する。
|