2022 Fiscal Year Research-status Report
Multidimensional Analysis on Trade Costs
Project/Area Number |
22K01468
|
Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
武智 一貴 法政大学, 経済学部, 教授 (80386341)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 貿易コスト / WTO |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、貿易コストの識別に必要な条件を明らかにし、正しい識別により貿易コストの影響がこれまで確認されてきたものよりも大きい点を示した。また、同時期に発生するアンチダンピング税が世界貿易に与える影響を分析し、これまで考えられてこなかった新しい影響の存在を明らかにした。
貿易コストの識別は、通常氷山型の貿易コスト関数を仮定して行われる。しかしながら、現実の貿易コストは氷山型だけでなく、従量型のものが存在する。これまでの研究では、それらを区別して識別する事が行われておらず、また、取引データから貿易コストを識別する際にはセルフセレクションのバイアスを考慮する必要もあるが、その点も分析が行われていない。本研究では、氷山型と従量型の貿易コストを同時に考慮し、セルフセレクションと財の品質の違いから生じるバイアスもコントロールした上で、貿易コストの規模を推定した。これまでの研究よりも、従量型の貿易コストの影響が大きく、セルフセレクションが大きなバイアスを生じていることを示し、正しい貿易コストの識別方法を提案することに成功した。査読付き海外学術雑誌に採択されている。
貿易コストは各国の貿易政策により影響を受ける。特にアンチダンピング税は、ある地域で賦課されると、その税を回避して他地域に貿易が拡大するため、異なる地域でも導入が行われ、世界的に関税率が上昇するケースがある。本研究では電解二酸化マンガンの貿易に対して世界的にアンチダンピング税が課されたケースを分析し、アンチダンピング税を賦課している国の輸出が拡大したり、これまで輸出を行っていなかった国が輸出を開始したりする新しい影響が存在することを確認した。これらの貿易拡大は必ずしも効率的なものとは限らないため、アンチダンピング税が世界厚生に与える新しい影響を示したと言える。本研究は学会において報告を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで継続していた研究を査読付き海外学術雑誌に投稿し採択されたものがあり、また、投稿中で修正要求をされているものがあるため。新しい研究についても、学会での報告を行い、また新規データを取得し整形段階に入っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
投稿中の論文の修正を行い、採択を目指す。また、新規に獲得したデータの整形を完了する必要がある。新規データの整形が完了することで、知的財産権にかかわる貿易コストの識別を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
海外購入データの価格が想定よりも低く、また、出張等の回数が予定よりも少なかったため。学会出張、購入データを処理するソフトウェア、高速ハードウェアの構築に使用する予定である。
|