2023 Fiscal Year Research-status Report
地方新聞の報道バイアス・経営方針に影響を与える要因の研究
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22K01512
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
春日 教測 甲南大学, 経済学部, 教授 (50363461)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鳥居 昭夫 中央大学, 経済研究所, 教授 (40164066)
宍倉 学 長崎大学, 経済学部, 教授 (40444872)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 地方新聞 / 報道バイアス / 同族経営 / 電子化 / 配信記事 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度にサーベイした海外の理論および実証に関する先行研究を踏まえ、具体的なデータを用いて推計を行い、「地方紙の記事構成と利益率等の財務成果との関係分析」について検証する作業を行った。 我々はメディアの中でも特に地方新聞を題材にとり、「不況時(もしくは経営状況が厳しい時)に読者を惹きつけるため、ソフトなニュースにより多くの紙面を割く傾向があるのか」という論点について検討した。健全な利益が獲得できている下では新聞はソフトなニュースにさほど紙面を割かず、報道機関としての社会的役割を重んじハードニュースに多くの紙面を割くと予想される。この点を、2018年10月~2019年9月間に日本の地方紙46紙に掲載された韓国の元法相の前法相の曺国 (チョ・グク)氏に関するスキャンダル記事報道を対象とし検証した。韓国と異なり日本では大手新聞社による報道は限定的だったが、両国間関係が最悪と言われた時期に地方紙での報道が多いことは政治的バイアスとして捉えることが可能であり、地方紙の報道バイアスの存在を実証的に把握するものとしては適切な題材だと考えられるためである。先行研究では誘導形のモデルを利用した推計が多かったが、需要側・供給側の推計を分けて検討した点も特徴となっている。 需要面の推計から、利益が大きくなればなるほどスキャンダル報道に紙面が割かれる傾向がある(読者はスキャンダル報道を娯楽として好む)、発行部数の伸び率が小さいほどスキャンダル報道に紙面が割かれる傾向がある、との結果が得られた。また供給面の推計からは、編集者はより多くの情報を送ることを好む(有益なニュースを送ることと利益追求のトレードオフ)こと、より保守的な地域では編集者はより多くのスキャンダル・ニュースを送る傾向があること、発行部数の多い新聞社ほどスキャンダルの多いニュースを送らない傾向がある、等の暫定的な結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1年目は前課題がコロナ禍で遅延したことのしわ寄せを受けており、2年目も研究代表者が大学異動を伴うなどイレギュラーな事項が発生し、若干の遅れを招いている状況は変わらなかった。 ただし本年は暫定的な推計結果を得ることができ、さらに海外の国際学会で発表し討論を行うところまでは研究を進めることができた点で、遅れ気味ではあるものの着実に進展はしているということができる。 また過去の科研費を利用して行った放送分野の研究をまとめる必要があったことも遅れの一端となっているが、こちらはTVer利用の進展と地方局の対応に関するデータ分析であり、本研究課題と比較対照して検討することができるため申請時にはなかった派生的分析として位置付けられるため、この点もむしろ前向きに評価できるのではないかと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」で記したような、データ分析で用いた代理変数と利潤との関係についてはある程度頑健な結果が得られているが、そのために提示した理論モデルの内容について、国際学会ではあまり議論がかみ合っていない印象を受けた。今後は海外の学術雑誌に投稿していくことを想定しているが、この点については追加的に発表・討論を行うことで、より受け入れられやすい論文に仕上げていく予定である。 また並行して、地方紙の同族企業経営の実態と電子化対応行動への影響分析を行うこととしている。ビッグ・モーター社やジャニーズの不祥事など、2023年度は同族経営の問題点が指摘された年だったが、地方新聞社の一部に根強く残存する同族経営と、電子化対応の遅速がどの程度関連しているのかについて、検討していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
科研費の前課題で予定していた研究内容がコロナ禍で実施できず1年延長したこと、代表研究者の大学異動が発生したため研究の進行に若干の遅れが生じ、その結果として資金計画にも余裕が生じている。 最終年度はアンケート調査を実施する予定としており、使用時期は後ろ倒しになったものの支出予定は変化していない。
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