2022 Fiscal Year Research-status Report
バリア・オプションのGreeksの統一的な計算手法の確立
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22K01556
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
石谷 謙介 東京都立大学, 理学研究科, 准教授 (30636436)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | バリア・オプション / Greeks / Wiener汎関数積分 / 微分連鎖律 / 3次元Bessel橋 / Brown彷徨過程 / Brown引越過程 / 関数近似と逆関数法 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来よりも複雑なバリア・オプションのGreeksの計算方法について研究を行った。具体的には、研究代表者の提案する「Wiener汎関数積分に対する微分連鎖律」(※以下、提案手法とよぶ)を応用することで、ヨーロッパ型だけででなく、ルックバック型やアジア型などのペイオフ関数と、時間に応じて変化する複雑なオプショントリガーを持つバリア・オプションのGreeksの計算が可能となる。これにより、従来は計算が困難であった様々なタイプのバリア・オプションのGreeksを統一的に計算することが可能となり、今後金融商品の設計の自由度が飛躍的に増すことが期待される。この提案手法に関する研究として、2022年度は主に次の内容の研究を行った。 (1) 1次オーダーのGreeksについて、ペイオフ関数がヨーロッパ型とルックバック型の場合に提案手法が有効であることを実証する研究を進めている。この研究を進めるにあたり、「一般化されたBrown彷徨過程」と「一般化された3次元Bessel橋」の汎関数期待値の数値計算方法の研究も行った。 (2) 高次オーダーのGreeksを計算するために必要となる、新たな確率過程(Brown引越過程)の構成方法に関する研究、およびBrown引越過程の汎関数期待値の数値計算方法に関する研究を行った。 (3) Brown引越過程の一般化であるδ次元Bessel引越過程の構成方法に関する研究、およびδ次元Bessel引越過程の汎関数期待値の数値計算方法の研究を行った。 (4) 提案手法の研究と関連して、逆関数法を用いて様々な確率過程のサンプルパスを高速に生成するための研究も進めている。この研究では有理関数近似の手法を用いており、この研究成果を完成・応用することで、様々な確率過程の汎関数期待値を高精度に計算できるようになることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ブラック・ショールズ・モデル(以下,BSモデル)のもとで、複雑なバリア・オプションのGreeksを、研究代表者が提案する「Wiener汎関数積分に対する微分連鎖律」(以下、提案手法)を用いて統一的に計算するための研究を行った。まず、1次オーダーのGreeksについて、ペイオフ関数がヨーロッパ型とルックバック型の場合に提案手法が有効であることを実証するための研究を進めている。一方で、高次オーダーのGreeksを計算するためには、従来は知られていなかった新たな確率過程(Brown引越過程)の理論研究を行う必要があるため、このBrown引越過程に関する研究を行った。更に、この研究を遂行するためには、様々な確率過程について、その汎関数期待値計算方法やサンプルパス生成方法を構築する必要があるため、それらの研究も行っている。特に、後者の「様々な確率過程に対するサンプルパス生成方法」を構築するために、有理関数近似手法を用いた逆関数法の研究も行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者が提案する「Wiener汎関数積分に対する微分連鎖律」を用いて複雑なバリア・オプションのGreeksを計算するためには、Brown彷徨過程、3次元Bessel橋およびBrown引越過程の汎関数期待値を高速に計算する必要がある。これらの3種類の確率過程のサンプルパス生成には困難を伴うため、現状では、これらの3種の確率過程が制限された時間区間上で3次元Bessel過程と絶対連続になることを利用して汎関数期待値の計算を試みる。更に、これらの3種類の確率過程のサンプルパス生成方法の構築も目指し、その実現のために必要となる「有理関数近似手法を用いた逆関数法の研究」にも着手する。
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Causes of Carryover |
2022年度にノートPCの購入を検討していたが、2022年度は、為替相場の影響もあり当初想定していた予算では十分な性能のノートPCを購入することが困難であった。そのため、2023年度に、本研究の数値計算を遂行するために十分な性能を持つノートPCを購入する予定となります。
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Research Products
(2 results)