2022 Fiscal Year Research-status Report
Reconstruction of the Socioeconomic History of the Medieval and Early Modern Periods in the "Ise Jingu Area," the Birthplace of Japan's First Banknote "Yamadahagaki
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22K01603
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Research Institution | Doho University |
Principal Investigator |
千枝 大志 同朋大学, 仏教文化研究所, 非常勤職員 (00609969)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 山田羽書 / 伊勢神宮門前町 / 貨幣・金融・信用 / 御師 / 伊勢信仰 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本最古の紙幣山田羽書を再検討するため、次の学会等に参加、現地調査等を実施した。①(第1回)和紙文化研究会(8月1日@愛知)、②国際貨幣学会議(INC)ワルシャワ大会リハーサル会(8月5日@大阪)、③「貨幣再考」研究会(8月10日@岐阜)、④地方史研究協議会第72回大会 共通論題報告プレ報告会(9月4日@ZOOM)、⑤国際貨幣学会議ワルシャワ大会(9月16日@ポーランド)、⑥地方史研究協議会第72回大会共通論題報告(10月16日@三重)⑦、第1回中近世伊勢社会経済史研究会(11月13日@三重)、⑧関連博物館史料調査(12月18日@東京)、⑨松阪歴史文化舎第5回松阪学入門講座(12月25日@三重)、⑩ReMo研究会ワークショップ「二項対立から総体的特質の解明」(1月7~8日@静岡)、⑪関連博物館等史料調査(2月17日@三重)、⑫令和4年度歴史講座「くらしと伝承」第3回(2月18日@三重)、⑬地方史研究協議会第72回大会総括例会(3月12~13日@三重)。研究成果として次を刊行できた。①『同朋大学仏教文化研究所2022年度前期史料展示 すり出されたカミ・ホトケ―出版からみた仏教文化―』(同朋大学仏教文化研究所、22年7月 )、②千枝大志・川口淳編著『これであなたも歴史探偵!―歴史資料調査入門』風媒社、22年8月)、③「16~17世紀伊勢神宮地域をめぐる信用と金融の実像」(中島圭一編『日本の中世貨幣と東アジア』勉誠出版、22年9月)、④「史料紹介 慶長7年5月吉日付『伊勢太神宮御材木之帳』について―十七世紀初頭尾州・江州をめぐる伊勢御師榎倉家の活動に関する一史料―」(『同朋大学仏教文化研究所紀要』42号 23年3月)。以上により、印刷物である山田羽書をその誕生地である〈伊勢神宮地域〉の都市経済構造の問題と絡め、発生と展開の史的意義を国内外の同様の存在と比較・相対化できたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該研究の初年度は大きく分けて、①国際会議(国際貨幣学会議(INC))ワルシャワ大会)、②国内学会・研究会(地方史研究協議会第72回大会共通論題報告等)への参加、③本科研費研究の研究集会(中近世伊勢社会経済史研究会)の実施という3つの枠組みで研究に取り組むことができたと考える。①と②はほぼ当初の計画通りで遂行でき、③は伊勢参詣曼荼羅の外国人研究者の来日に合わせて急遽企画したものである。①により、2023年6月のブルガリアでの国際会議での研究発表の機会を得る等の国外での当該研究の進展が期待できる貴重な経験となった。とりわけ、山田羽書は現存最古の羽書が慶長15年(1615)であるため、日本初の紙幣(私札)であり、8世紀の中国(北宗)の会子、17世紀初期英国のゴールドスミスノート(金匠手形)に次ぐ民間紙幣であることは日本経済史研究者間ではよく知られているものの、一方で海外では、ほぼ無名の存在であることが窺えた。そのため、日本国内はもとより海外において、その存在をよりPRしなければならないという思いを新たにできたことは大きな収穫であった。その際、海外研究者からは中国紙幣史や欧州紙幣史との比較の視座を持ったほうがよいとのアドバイスを頂戴している。よって次年度以降、日本国外に所在する山田羽書やその関連史料の所在確認調査と共に、numismatic(古貨幣学)を軸とする比較史的研究を進めていきたいと考えている。また、千枝が<伊勢神宮地域>と定義する山田羽書を生み出した場である伊勢神宮門前町宇治山田を含む伊勢国度会郡宮川以東部の経済構造は、伊勢信仰に支えられた<信仰経済>的な様相を有することを少なくとも16世紀代から窺えることが伊勢参詣曼荼羅の分析からも大枠が再確認できたため、次年度以降も中世経済史枠でも当該研究を進展させていきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度と同様、当該研究を進め、その成果公開に努めたい。特に2023年度は、第2回ブルガリア貨幣学会議(10th Joint Meeting of ECFN and Nomisma.org &2nd BulgNR TOGETHER)等でのnumismatic(古貨幣学)的な山田羽書研究の英語による研究発表が計2回(ブルガリア・ソフィア大学、大阪・大阪経済大学)予定されており、また、中世金融・信用史枠での全国学会の大会報告(中世史研究会)もあるため、それらを重点的に取り組んでいきたい。なお、以上のような英語による研究発表(ブルガリア・大阪)は2022年度当初の計画段階では予定はなかったため、研究計画を変更し2023年度の重点課題に設定している。
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Causes of Carryover |
2023年度は当初の研究計画では予定していなかったブルガリア共和国ソフィア大学で2023年6月に開催される国際会議である第2回ブルガリア貨幣学会議(10th Joint Meeting of ECFN and Nomisma.org&2nd BulgNR TOGETHER)に参加し、研究発表を行うため、その旅費(新幹線代・航空券代)や宿泊費等を捻出するために、2022年度の助成金を半分程度(計580220円)残すことにしたため次年度使用額に差が生じている。
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Research Products
(6 results)