2023 Fiscal Year Research-status Report
Domestic Slave Trade in the Early 19th Century American South and the Development of American Capitalism
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22K01611
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
柳生 智子 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 教授 (40306866)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 奴隷制 / アメリカ南部 / 奴隷貿易 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究において、2023年度はサウス・カロライナ植民地のチャールストンを中心に、奴隷を扱った植民地貿易商人の分析を進めた。資料は以前から所有する植民地期の財務局関税資料に加え、印刷された奴隷商人の日誌・帳簿類やオンラインで海外の公文書館・史料館から入手可能な一次史料や貿易統計などを収集・調査した。 本研究は19世紀以降の南部地域内の奴隷取引が活発化する時期(1830~40年代あたり)まで、奴隷貿易・奴隷取引の連続性に注視しながら、アメリカ資本主義の発展への奴隷制度の長期的貢献について分析する予定であるが、2023年度までは本研究対象時期の前半部分にあたる植民地時代までの分析を中心に取り組んできた。2024年度内にサウス・カロライナ植民地と植民地奴隷貿易商人に関する著書を刊行する予定であり、出版以降は研究の対象時期をその後の独立期・建国期に移す計画である。建国後、いかに植民地期の大西洋奴隷貿易の枠組みや諸制度が継承されたかを掘り下げ、さらに19世紀以降の南部プランテーションと奴隷制の定着・隆盛に至るまでの経緯について分析する。19世紀前半の南部地域内で見られた奴隷取引については、研究代表者のこれまでの研究蓄積があり、それらの研究と本研究の成果を結び付けることで、植民地時代から南北戦争前の時期に至る長期的な視点で、奴隷制度の確立とアメリカ資本主義への影響について把握することが可能となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
植民地期の奴隷商人と大西洋貿易についての出版企画が進んでおり、著書に用いる資料の分析と原稿の執筆に多くの時間を要した。一方、代表者が夏以降体調を崩すという不測の事態や親の介護など当初予期せなかった状況も発生し、研究に専念する時間を確保することが難しい時期が続いた。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年中には研究代表者の体調に関しては回復が見込まれることから、植民地期から建国期にかけての奴隷貿易商人の記録・史料の分析を継続する。さらに植民地期のチャールストン奴隷貿易商人の分析に関する論文を海外学術誌へ投稿、次年度以降は国内の学会での報告、植民地期インディアン奴隷制に関する論文の国内学術誌への投稿を計画している。
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Causes of Carryover |
著書の執筆に時間を費やし、その他の研究については進められなかった。研究代表者本人の体調不良など不測の事態もあり、海外調査や学会報告は実現せず、次年度以降の使用額が生じることとなった。2024年度以降、植民地時代のチャールストン奴隷商人分析を海外の学術誌に投稿する予定である。さらに、黒人奴隷制の前段階としてアメリカ南部に広まっていたインディアン奴隷制についても論考を準備しており、2025年の刊行を目指す。2025年までには近年アメリカ史研究で脚光を浴びるアメリカ資本主義発達史(New History of American Capitalism)と従来のアメリカ経済史研究の対立についての論考もしくは学界展望を学術誌に投稿する。またCambridge University Press のCambridge Studies on the American Southをはじめ、複数の出版社にあたって海外での著書の出版契約を取り、博士論文からのテーマであり、本研究テーマの根幹となる19世紀前半の南部奴隷取引の実態とアメリカの資本主義発展についての著作を発表することが目標である。
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