2022 Fiscal Year Research-status Report
仕事実践と組織スペースの関係性に関する理論的・経験的研究
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22K01624
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
宇田 忠司 北海道大学, 経済学研究院, 准教授 (80431378)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 組織スペース / 実践 / コワーキング / 身体 / 現象学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,わが国における働く人々の仕事実践と組織スペースとの関係性を解明することである。研究期間の1年目である令和4年度の主要な成果は,"Producing the organizational space: Buddhist temples as co-working spaces" である。 本論文の目的は,寺院を活用したコワーキングの関係者の実践によって当該空間がどのように生成されたかを明らかにすることである。具体的に,寺コワーキングの立案・運営者と利用者の経験に関する聞き取り調査と公表資料をもとに,当該スペースがどのように認知・設計され,実際に利用されたか,また利用者 の実践により当該空間がどのように再生成されたか,が検討された。主な結果は次の通りである。まず,寺コワーキングは,登録ワーカーと直接交流する場を求めていた在宅就労支援事業者とその知人の住職という寺院空間に関する知識や経験に大きな差異がある立案者によって共創された。寺院に馴染みのなかった利用者は当該空間を肯定的に捉え,場や状況に即した体勢や振る舞いをもとに心地良い空間を経験・形成していった。また,立案・運営者の想定を超えて,利用者は仕事空間としてだけでなく,地域の人々が集い交わる社会的空間としての寺院の可能性(寺院の存在意義に関わり,かつて地域共同体で広く認知されていた)を見出した。さらに,利用者は,広大で隅々まで美しく整えられ,歴史や伝統を帯びた畳などの建材や仏具などから成る非日常的空間に新鮮さや心地良さを感じ取る一方,(非日常的あるいは聖的であるがゆえに)そこで生成される雰囲気を通して自らの居住まいを意識的・無意識的に正そうともしていた。 本成果の意義は,組織スペースと仕事実践との関係に関する経験的研究がとくに国内では不十分ななか,理論的・実践的に資する知見を提示したことである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和4年度の主な研究計画は,(1)本テーマに関する先行研究の包括的なレビューをもとに,理論枠組を検討する, (2)コワーキングスペース等における多様な人々の仕事実践の観察調査に着手する, (3)先行研究のレビューをもとに理論枠組に適した測定尺度を選定し,質問票を設計する, (4)理論枠組に関する論文を国際ジャーナルに投稿する,ことであった。 (1)と(2)については概ね順調に進められたが,(3)については測定尺度の探索に着手できたものの,質問票の設計には至らなかった。また,(4)についても理論枠組みの検討は進められたが,論文として取りまとめ,投稿するまでには至らなかった。 以上から上記の区分に該当すると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,研究計画上,主として量的調査の設計・実施と観察調査の継続に取り組んでいくことが求められる。 研究活動を推進するための方策として,引き続き国内外の研究者や実務家(調査協力者も含め)と対面やオンラインで交流することが挙げられる。幸い,メンバーとして所属するResearch Group on Collaborative Spaces(RGCS: 協同型スペースにまつわる現象に関心のある研究者や実務家から構成される国際ネットワーク組織)は積極的にオンラインのセミナーやワークショップ等を開催している。また,これまでの活動を通して,コワーキングスペースを中心に組織スペースの立案・運営者や当該スペースにおいて仕事を実践する人々との結びつきも質的・量的に向上している。そのため,経営学や社会科学領域の先端的かつ示唆に富む理論,方法論,組織スペースに関する経験・実践等に関する情報・意見交換やデータ収集を期待できる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は,「現在までの進捗状況」欄でも言及したように,今年度の活動として計画していた質問票の設計には至らなかったためである。 当該研究活動は,本課題における中核的手続きの一つであるため,次年度に取り組み,その際に使用する予定である。なお,現時点では,研究活動を推進させるために,質問票の探索・設計過程で研究計画段階よりも研究室に所属する大学院生などから支援を得ることを考えている。
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Research Products
(1 results)