2023 Fiscal Year Research-status Report
事業転換における新領域探索のための文脈導出と事業再定義に関する研究
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22K01651
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
奥居 正樹 武庫川女子大学, 社会情報学部, 教授 (20363260)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 事業転換 / 探索 / 市場探索 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は新しい事業領域を見出すための文脈導出に関する文献調査と事業コンテクストの文脈を読み替える「収束と拡散」の実態について、地場産業に焦点をあててヒアリング調査に取り組んだ。 文献調査では、既存事業で深化させた技術を従前とは異なる事業領域へ転用するための理論と事例の探索に取り組んだ。O'Reilly & Tushman(2016)は既存事業の深化と新規事業の探索の両立に関して、企業は既存の資産と組織能力を活用しながら、トップマネジメントの指導力の下でこれまで蓄積してきた技術を新しい領域へ応用しながら新しい強みへ作り替える重要性を指摘する。同様に冨山(2020)は自身の実務における知見から事業・機能ポートフォリオを日常的に見直しながら入れ替える重要性を指摘し、そのためには組織能力の多様化や人材の流動化が必要と論じる。そこでは既存技術を活用可能な新領域をどのように探索するのかについては人材の流動化や外部から組み合わせる技術の多様化が示される。しかしコンテクストの共有を前提とする日本人のコミュニケーションの特性とそれを基盤とする日本的経営は一足飛びでは変えることができない。そのため、これに適合する新領域の探索方法については課題が残されている。 そこで本年は燕三条地域など金属加工の産業集積が進む地域における企業の事業転換について地場産業センター等に調査を行った。そこで明らかとなったのは、既存技術をそのまま流用できる、これまで手がけてない新しい市場を探索する事例が多いことであった。分業が進む地域内において、金属加工の中でも自社の強みである特定の加工技術を活かすために市場領域の拡散を図り、顧客ニーズに応えることができる領域に再収束していくものと捉えられる。金属加工に確固たる自信を持ち、製品として応用する技術の範囲を拡げていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最初の課題である「技術が持つ意味・価値の導出を読み替える理論とそのパターンの把握」に対する選考研究レビューは概ね順調に推移しているが、異なる事業領域への事業転換に成功する企業へのアプローチ、特に海外企業とのコンタクトが計画どおりに進まず、インタビュー調査が予定よりも遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は第2の課題である「文脈読替のための『収束と拡散』の実態と変相パターについて引き続き文献調査を続けるとともに、遅れている第3の課題である文脈読替における海外企業の実態と日本企業との対比について取り組む。 コロナ感染症の世界的な流行もほぼおさまっているが、この疫病がもたらした企業への影響は大きく、研究当初からは想定外の組織変更や担当者の移動などが生じている。そのため、調査対象との調整を密にしながら計画していた調査のスケジュール遵守に努める。
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Causes of Carryover |
企業に対する調査協力が得られにくくなっており、国内での訪問調査は2カ所にとどまったこと、そして予定していた海外調査は先送りとなったことが主因である。コロナ禍の影響がおさまる中、調査対象企業を全国に拡げるとともに、海外調査も着実に実施することで対応する。
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